突如として襲いかかる自然災害。特に地震大国の日本では、いつ・どこで大震災が発生しても不思議ではない。噴火や豪雨による災害もたびたび起きている。明日、大地震が発生すれば、自分が被災者になる可能性もあるのだ。

では、私たちは災害から身を守るために何をすればいいのか。

大切なことはいくつかあるが、まずは正しい災害情報を迅速に入手する必要があるだろう。「津波が到達するエリアはどこか」「土砂災害に警戒すべきか」といった防災情報をもとに、安全な場所へ避難しなければならないためだ。

スマートフォンへの緊急地震速報やWebの災害用伝言版など、災害分野におけるITの活用は増えてきているが、まだまだ、屋外スピーカーを用いた市区町村庁舎の発信する防災行政無線に依存している地域も少なくないという。

そのような状況に対して、企業はどのような取り組みを行っているのだろうか。2月26日にNTTデータが開催した「ICTを活用した防災・減災に関するセミナー」において、同社の考えや取り組みが紹介された。NTTデータ 第二公共事業本部 第四公共事業部 防災ソリューション担当 課長代理の阿部暁氏は「ICTを活用した防災情報伝達」について、課題とあるべき姿を次のように分析する。

「災害が発生した際には円滑な情報の伝達が求められます。ただし、住民へ避難勧告を行っている市区町村やその職員が安全でいられるとは限りません。屋外スピーカーを活用した防災行政無線だけでは、そのルートが断たれた場合、防災情報を伝達できなくなってしまいます。屋外のスピーカーに加えて、多様なメディアで確実に災害情報の届ける必要があるでしょう」

  • NTTデータ 第二公共事業本部 第四公共事業部 防災ソリューション担当 課長代理の阿部暁氏

    NTTデータ 第二公共事業本部 第四公共事業部 防災ソリューション担当 課長代理の阿部暁氏

屋外のスピーカーは周囲300mまでの情報伝達能力を有しているとされるが、天候や地形によって音の到達距離は異なり、現場の状況によってはうまく聞き取れない可能性もあるだろう。そのため、スマートフォンやテレビ、ラジオ、カーナビなど、さまざまなメディアに対して情報を発信し、確実に個人へ届くようにしなければならないのだ。

また、情報発信者が常に安全だとは限らない。職員が安全でもシステムが被災している可能性もある。発信に必要な建物やシステムが壊れてしまえば、避難勧告は行えなくなってしまう。

「システムのある建物が被災する可能性を考えると、クラウド化やほかの市区町村とシステムの共有化を進めて、情報伝達の継続性を確保する必要があります。民間事業ではあたりまえになってきているクラウド化ですが、防災分野ではまだあまり浸透していませんね」

システムのクラウド化や共有化が実現できれば、被災地外から避難警告を発信できるようになる。遠隔地から情報を発信できれば、広範囲に影響を及ぼす大地震でも、情報発信者は安全を確保しつつ避難勧告を出せるのだ。

  • ICTの活用によって情報伝達手段の多様化を進める

    ICTの活用によって情報伝達手段の多様化を進める

  • 防災拠点が被災しても継続性を確保することが大事

    防災拠点が被災しても継続性を確保することが大事

さらに、災害は深夜早朝お構いなしにやってくる。深夜に発生した場合でも迅速に情報共有できなければならない。しかし、現場の状況によっては情報の収集に長時間費やしてしまう可能性がある。情報が遅れてしまうと、住民が避難できず、被害が拡大してしまう。そこで活躍するのがTwitterなどのSNSだ。

「ICTを活用することで、リアルタイムでの情報共有も可能です。たとえば、SNSなどに投稿されている住民の声を共有することで、スピーディな情報拡散ができるようになるでしょう。実際、2016年に発生した熊本地震では、SNSが情報収集手段として活用されました。ただし、なかには誤った情報も含まれているため、情報を入手する際は注意が必要です」

  • リアルタイムでの情報共有

    リアルタイムでの情報共有