京都大学(京大)は2月27日、分子標的治療薬・バンデタニブによって治療されたRET融合遺伝子陽性の肺がん患者のがん試料の機能ゲノム解析を行い、薬剤耐性メカニズムを発見したと発表した。

  • 遺伝子変異により生じる薬剤結合部位のコンフォーメーション変化 (出所:京都大学Webサイト)

同成果は、がん研究センターの研究所ゲノム生物学研究分野の中奥敬史 研究員、河野隆志分野長、東病院呼吸器内科の後藤功一 科長、京都大学、東京大学、理化学研究所、英国クリック研究所の共同研究グループによるもの。詳細は米国の学術誌「Nature Communications」に掲載された。

現在、日本で年間に約11万人が肺がんを発症し、約7万人が肺がんで死亡している。肺がんの約85%を占める非小細胞肺がんにおいては、遺伝子異常にもとづく分子標的治療が有力な治療手段の1つとなっている。しかし、がん細胞が獲得する分子標的治療薬への耐性の獲得が、治療効果の大きな障壁となっていた。

今回の研究では、バンデタニブが奏効し、後に耐性化した RET遺伝子融合陽性の肺がんの RET遺伝子上に生じた2次変異について、X線構造解析、スーパーコンピュータ「京」などを用いた分子動力学シミュレーションなどを組み合わせた機能ゲノム解析を行うことで、これまでとは異なる薬剤耐性機構を発見したという。

なお、今回の成果を受けて研究グループは、今回の手法は、がん化や治療に関する意義がわからない意義不明変異を解明し、治療の方針決定の手助けになると期待している。