エクスチェンジコーポレーション(ExCo)とダイナテックは2月28日、都内で記者会見を開き、「Paidy」とダイナテックのブッキングエンジン「Direct In(ダイレクトイン)」の連携を行うと発表した。

旅行サービス系のEC市場でのシェア獲得

今回のシステム連携により、すでにダイレクトインを導入している3100の国内ホテル・旅館で決済手段の1つとして、Paidyを利用することが可能になる。両社は4月までに連携を完了させ、サービスの提供開始を予定している。

Paidyは電話番号にひもづいた即時決済、翌月のまとめ払い、分割払いに対応、事前申込みクレジットカードが不要であり、支払いはコンビニ、銀行振り込み、口座振替にも対応している。

また、PC、タブレット、モバイルとOSやデバイスに依存しない決済を可能とし、請求書はこれらの端末から確認できるためペーパレスを実現することに加え、SMS認証による本人確認でセキュリティを担保している。

  • 「Paidy」の概要

    「Paidy」の概要

エクスチェンジコーポレーション 執行役員 営業本部 橋本知周氏は「近年、BtoCのEC市場規模は拡大しており、特に旅行サービス系のEC市場規模は大きい。一方で、ユーザーがオンラインショッピングを利用しない理由としては、クレジットカードを保有していないことやセキュリティに対する不安などが挙げられる」との認識を示す。

  • エクスチェンジコーポレーション 執行役員 営業本部 橋本知周氏

    エクスチェンジコーポレーション 執行役員 営業本部 橋本知周氏

  • 旅行サービス系EC市場は拡大傾向にあ

    旅行サービス系EC市場は拡大傾向にある

これらの現状を踏まえ、Paidyの加盟店とユーザーが得るメリットについて同氏は説明した。加盟加盟店が得るメリットとしては、「新しい顧客の取込み」「キャンセル料の回収」「コンバージョン率の向上」「決済手数料のみ」の4点を挙げる。

新しい顧客の取込みについては、クレジットカードを使用しない事前決済のユーザーニーズを獲得し、自社サイト比率を向上させるほか、キャンセル料の回収に関してはキャンセル料を100%保証し、No Show(予約者がキャンセル連絡せずに現れないこと)のリスクがないという。

コンバージョン率の向上では、簡潔に決済が確定できることからデータ入力途中の離脱を防ぐ。決済手数料については、トランザクション費用や初期費用、固定費用がないためコストの抑制を可能としている。

  • 加盟店が得るメリットの概要

    加盟店が得るメリットの概要

一方、ユーザーのメリットとして橋本氏は次のように述べた。

「Web予約システムの30%は事前カード決済、70%が現地決済となっている。事前決済が進まないのは、宿泊客がクレジットカードを保有していないことに加え、セキュリティへの懸念があるためだ。現地決済についても、お得なプランがあるため本当は事前決済したいユーザーもいるが、事前決済が進まない理由と同様の傾向が見られる。そのため、クレジットカードを保有していない、また、セキュリティに対する不安があるユーザーが抱える課題は、われわれのサービスで解決することが可能だ」

  • ユーザーが得るメリットの概要

    ユーザーが得るメリットの概要

以下の動画はPaidyを使用したホテルを予約するまでのデモ動画となる。

インバウンドへの対応は?

ダイナテックは、ヤフー傘下で開発・運用・サポートをはじめ、宿泊施設向けのシステムを提供している。

ExCoとの連携について、同社 代表取締役社長の齋藤克也氏は「旅行離れによりユーザーニーズが多様化しているため、これらのニーズを吸い上げるほか、宿泊施設としてはキャンセルが大きな問題であり、現地決済の場合はキャンセル料が支払われないケースもある。そのため、事前決済の重要性は従来から認識しており、ExCoとのシステム連携で事前決済に誘導し、宿泊施設、ExCo、われわれがWin×Win×Winの関係が築ければと考えている」と、期待を口にした。

  • ダイナテック 代表取締役社長の齋藤克也氏

    ダイナテック 代表取締役社長の齋藤克也氏

エクスチェンジコーポレーション 代表取締役会長のラッセル・カマー氏は「今後のビジョンとしては、ホテルの予約や飛行機の支払いなど旅行系サービスに注力していく」と、将来的な展望について説明した。

  • エクスチェンジコーポレーション 代表取締役会長のラッセル・カマー氏

    エクスチェンジコーポレーション 代表取締役会長のラッセル・カマー氏

また、今年6月に予定されている旅館業法施行令と施行規則の改正により、指紋認証などのICT設備で安全確保や本人確認ができる場合は、一定の条件を満たせばホテルと旅館のフロントを設置しないことも認められるようになる。

今回の連携は、同改正案によりフロントに立ち寄らない客室内でのチェックイン・アウトや、オンラインのセルフチェックイン・アウトへの対応も想定しているという。

ただ、Paidyはあくまでも携帯電話番号をベースにした国内サービスのため、インバウンドには対応していない。今後、法人が保有する宿泊施設の管理は専門業者にアウトソーシングすることが見込まれていることから、大きなビジネスチャンスでもある。

この点について橋本氏は「まずは国内でしっかりとしたサービスを提供することに注力し、ゆくゆくはインバウンド対応も検討していく可能性はある」と話しており、今後の訪日外国人観光客の拡大を見据え、インバウンドに対応していくことが望まれる。

なお、両社は3月から全国5都市で開催される「ダイナテック カンファレンス 2018」への参加などを通じて、ダイレクトインを使用している施設にPaidy導入を促すとともに、宿泊施設の生産性向上と顧客の利便性向上のために、さまざまな取り組みを進めていく方針だ。

  • 左から齋藤氏、カマー氏、橋本氏

    左から齋藤氏、カマー氏、橋本氏