デルとEMCジャパンは2月14日、都内で米Dell Technologiesが実施した人とマシンの協調関係に関する調査レポートについて記者説明会を開催した。

同調査は英Vanson Bourneが実施し、Dell Technologiesが2017年7月に発表した「2030年を実現する:人とマシンの協調関係が切り拓く人類の未来」という独自調査に続くものとなる。

大手・中堅企業の経営幹部クラス(ファイナンス、セールス、IT/テクノロジー、カスタマーサービス、製造、HR、マーケティングなど)3800人、業界は自動車、ファイナンシャルサービス、公的医療機関、民間医療機関、ライフサイエンス、ハイテク/通信、保険、製造、メディア/エンターテイメント、石油/ガス、小売/消費財、規模は北米/中南米、APJ、EMEAの世界17カ国を対象とした。

人とマシンの融合は必要だが、割れる見解

冒頭、デル 最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏は「AIやマシンラーニング、ロボティクス、VR、クラウドなど多様な技術があるが、これらすべてを総称し、マシンと位置づけている」と述べた。

  • デル 最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏

    デル 最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏

同社では、さまざまな新しいテクノロジーが2030年までに質の高いマシンと人との協調関係を作り上げ、人間が限界を越える手助けをしてくれるようになると予測。実際、グローバルにおいては82%が「5年以内に自社において人とマシンが1つの統合チームとして仕事をするだろう」と回答、うち26%がすでに人とマシンが1つの統合チームとして仕事をこなしていると回答した。

続いてライフスタイル、ビジネスシーン、企業の3分野における2030年の予測について尋ねたところ、ライフスタイルでは半数が「システムの自動化によって労働時間が削減されるだろう」と予測している一方、残りの半数は「そうは思わない」と答えている。

  • ライフスタイルにおける2030年の予測

    ライフスタイルにおける2030年の予測

同様にビジネスシーンでは、42%が「作業をインテリジェントマシンに任せることで仕事の満足度が高まるだろう」と回答し、58%が「そうは思わない」と回答、企業では「自動運転マシンに障害が発生した場合の明確な対応手順を確率する必要がある」と回答したのは50%、「そうは思わない」も50%となり、いずれの場合も見解が割れた。

  • ビジネスシーンにおける2030年の予測

    ビジネスシーンにおける2030年の予測

  • 企業における2030年の予測

    企業における2030年の予測

一方で「デジタルは仕事のあらゆる部分に浸透している」と答えたのは27%(日本企業17%)となり、「変化のペースに合わせようと多大な努力を払っている」と回答したのは57%(同54%)、「今後10年間、競争に打ち勝つことができるかどうか分からない」と答えたのは42%(同53%)、「2030年にデジタル企業となるプロセスの中で何からの課題に直面している」と回答したのは93%(同97%)となった。黒田氏は日本企業はグローバルと比較して、マシンを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)に対して不安感を持っていると指摘していた。

  • ビジネスリーダーの認識

    ビジネスリーダーの認識

また、DX実現における障害に関してはグローバル、日本企業ともに「デジタルに対するビジョンと戦略の不足」(グローバル61%、日本企業69%)、「スタッフの準備不足」(同61%、同62%)が上位2つを占め、特に日本企業では闇雲に取り組むのでなく、どこに向かってDXを進めていけばよいのかを固めたい意向があるため、進む上での障害になっているという。

  • DXに伴う障害

    DXに伴う障害

DXを進めるためには? グローバルと日本企業に認識の違い

では、DXを進めるためには何が必要なのだろうか。これに対しては「従業員の理解と受け入れを進める」がグローバルで90%、日本企業で76%、「カスタマーエクスペリエンスを役員レベルの優先事項に高める」が同88%、同72%、「デジタルのゴールと戦略に合わせた報酬研修・KPIを設定」が同85%、同72%、「完全にリモートかつ柔軟な働き方をサポートする施策とテクノロジーを導入」が同85%、同65%という結果にとなった。

  • DX推進のための施策

    DX推進のための施策

そして、5年以内にどのようなことが進展しているかについては「効果的なサイバーセキュリティ体制を確率している」がグローバルで94%、日本企業で72%、「製品をクラウドライクな料金体系で提供している」が同90%、同60%、「ソフトウェアディファインド企業への移行が完了している」が同89%、同55%、「R&D(研究開発)がビジネス推進の原動力になっている」が同85%、同36%、「VRによりハイパーコネクテッドカスマターエクスペリエンスを提供している」が同80%、同45%、「AIにより顧客ニーズを先取りしている」が同81%、同48%となる。

  • 5年以内に進展が予測される事柄

    5年以内に進展が予測される事柄

黒田氏は「DX推進のための施策と5年以内の進展は、いずれもグローバル、日本ともに同様の傾向となっている。一方で、R&Dに関して日本企業の認識は芳しくなく、危惧すべき状況だ」と、危機感を露わにした。

そのほか、今後5年間で投資するテクノロジーについては、最も投資されていないテクノロジーはAIとなっており「すでに投資している」と答えたのは、わずか24%(グローバルの数値)。しかし、55%が「5年以内に投資する」と回答しており、AIが業務で本格的に活用されるのは、まだ先の話のようだ。

  • 今後5年間におけるテクノロジーへの投資内容

    今後5年間におけるテクノロジーへの投資内容

これらの調査結果から、同氏は「大きな変革を迎える中でDXに取り組んでいるため、日本企業にも推進していもらいたいと考えている。グローバルとの認識の差が垣間見えたが、ビジョンと戦略を明らかにし、会社を動かすことからスタートすれば世界をリードできるのではないか」と、述べていた。