近年、ビジネスでは業界を問わずデータの活用が重要な課題になっている。宿泊施設は需要予測から宿泊費を導き出し、飲食店は来店予測で仕入れの量を調節する。さらに商品配置の最適化や、金融機関の与信モデル構築、パーソナライズされた広告の配信など、データから導き出されるさまざまな施策が、生産性の向上につながり、企業の競争力を高めていくのだ。

そのため、企業にとっては、データ分析に長けた人材の確保が急務である。事実、堅田氏はデータサイエンティストの求人を目にする機会が増えたと感じているという。

「数年前までデータサイエンティストを募集している企業といえば、アマゾンや楽天、一部コンサルティング企業くらいでした。最近は、Webサービス企業でデータサイエンティストもしくはそれに近い仕事の募集も見かけるようになりました。求人数自体は増えているでしょう」

  • データミックス代表取締役社長の堅田洋資氏

しかし、企業がいくら求人を増やしたところで、すぐにデータサイエンティストが増えるわけではない。資格や免許もないため、自分がデータサイエンティストの応募資格を満たしているかわからない人も多いはずだ。現状は、まだまだ人材不足の状態が続いている。

そこで、同社が開始したのがデータサイエンティストを目指す人のための育成スクール。未経験でも初歩の段階からデータサイエンティストに必要な知識やスキル、考え方を実践的に学べる約6カ月間のプログラムだ。全体としては、基礎を学ぶ「ブートキャンプ」「ベーシック」を経て、実務で結果を出すために必要なスキルを学ぶ「アドバンス」「インテグレーション」と続く、全4ステップで構成される。

データサイエンティストには「Python」や「R」といったプログラミング技術に加えて、機械学習のスキル、分析に必要な統計学の知識などが求められる。そのため、講義では「Python」や「R」、統計学、自然言語、画像認識について学び、「不動産の売買履歴から価格を予測する」「テレアポのデータから購入者の特徴を抽出し、ROIの最も高い人を探す」といったケーススタディを実施。週1回講義が実施され、各回、ボリュームのある宿題が出されるという。そして、最終的には自由にテーマを設定した個人課題をクリアして、無事にゴールまでたどり着くという流れだ。なお、講義のない日でもチャットなどでサポートしてくれる。

「データサイエンティストは膨大なデータから、最適なレコメンデーションや需要予測、消費者行動の予測などを実施するため、機械学習のアルゴリズムなども学びます。購買分析を行うシステムなどをサービスとして提供している企業もありますが、データサイエンティストがいれば、わざわざシステムを買う必要なく、Python1つで自社に必要な形の分析を行うことができます」

2017年7月にスタートして、3カ月ごとに生徒を募集しているこの「データサイエンティスト育成プログラム」。各回で30名前後の応募があり、2018年1月時点では延べ90名弱の生徒がデータサイエンティストを目指して、日夜勉学に励んでいるという。

「データサイエンティストとしてキャリアチェンジしたい人も、もちろん数多くいらっしゃいますが、会社の指示で受講している人も多いですね。AI関連の部署や研究室が設立された企業などから2~3名で受けに来ています」

人材不足を補うために、求人を募集するだけでなく、自社で育成しようという考えの企業も多いようだ。そのほか、データサイエンティストと仕事をする経営企画部や投資事業を担当する人なども訪れるという。