九州大学(九大)は2月2日、新規高性能熱電材料の新しい設計指針を提案したと発表した
同成果は、産業技術総合研究所省エネルギー研究部門熱電変換グループの李哲虎 主任研究員と、九州大学大学院総合理工学研究院の末國晃一郎 准教授らの研究グループによるもの。詳細は科学誌「Advanced Materials」にオンライン掲載された。
熱電発電では熱の流れの一部を電気の流れに変換して発電する。高い熱電性能を得るには高い電気伝導率と低い熱伝導率を併せ持つ必要がある。これらは一般に相反する性質であるが、両立させるには、原子の大振幅振動(ラットリング)が有効であることが知られていた。
しかし、これまでラットリングは原子がカゴ中に取り込まれた構造を持つカゴ状物質でのみ生じると考えられており、ラットリングによる熱電性能向上を期待できる材料系は限られていた。
一方、研究グループは、これまでにカゴ状構造を持たないテトラヘドライトでもラットリングが生じていることを発見していたが、その原因解明が課題となっていた。
今回の研究では、このテトラヘドライトを詳細に調べ、カゴ状構造がなくても平面配位構造がラットリングを誘起しうることや、その原因を明らかにした。この成果は熱電材料探索の範囲を広げ、より高い熱電性能を持つ新材料の創製に資すると期待される。
なお、今回の成果を受けて研究グループは、今後、既存の平面配位をとる物質について配位原子や中心原子を半径のより大きな原子で置換して面内における実効的な化学的圧力を強め、ラットリングを誘起させて熱伝導率を下げ、より高い性能を持つ新しい熱電材料の開発を目指すとしている。