12万4834件。

これは2012年2月から2014年7月までの約2年半で廃業になった飲食店の事業者数だ(参考:経済産業省「平成26年 経済センサス‐基礎調査 事業所に関する集計」)。

技術が発展した現代においても、飲食店では人の力に頼らざるを得ない状況が続いており、店舗の改革をするために好成績を出した他店の店長を派遣するといったアナログな手段が使われることも多い。店舗経営に秀でた人材の採用や育成を実施しようにも、そこまで手が回らないのが実情なのである。

そんな店舗経営をサポートするため、リクルートライフスタイルは1月30日に、ビッグデータやAIを活用して飲食店経営をアシストする「Airメイト」を発表。Airメイトでは、同社の提供しているPOSレジアプリ「Airレジ」をはじめ、予約管理台帳「レストランボード」、シフト管理サービス「Airシフト」などと連携することで、タブレット端末で集客や仕入れ、客単価などの経営状況を把握することができる。

  • Airメイトのサービス紹介ページ

    Airメイトのサービス紹介ページ

飲食店の経営改善をアシストするAirメイト

「Airメイトを使うことで、Airレジをはじめ、リクルートが提供している各種サービスから集まる大量のデータを活用し、今までなかった店舗の経営改善アドバイスができるのではないかと考えています」

そう話すのは、リクルートライフスタイル Airレジ 事業責任者の山口順通氏だ。

「我々は4年前に無料POSレジアプリのAirレジをリリースしました。そしてAirレジを起点に非現金決済のAirペイ、待ち行列を管理するAirウェイトなど数々の店舗業務支援ツールを提供しています。今回Airレジの新たな進化として、誰でも簡単に店舗状況の把握や改善を支援する仕組みのAirメイトをリリースすることに決まりました」と、開発の経緯を語った。

  • リクルートライフスタイル Airレジ 事業責任者の山口順通氏

    リクルートライフスタイル Airレジ 事業責任者の山口順通氏

リクルートライフスタイル Airメイト サービス責任者である甲斐駿介氏は、「飲食店で働く人は、いわば職人。データを集計するといった業務には慣れていません。そのためAirメイトはとにかくシンプルな操作で、店舗で何が起きているのか判断できるようにしました」とAirメイトの特徴を語る。

  • リクルートライフスタイル Airメイト サービス責任者の甲斐駿介氏

    リクルートライフスタイル Airメイト サービス責任者の甲斐駿介氏

Airメイトでは「全店舗サマリ」の機能をはじめ、「店舗サマリ」「メニュー分析」など、さまざまな機能が搭載されており、データをもとに自動でグラフや表が作成されるため、店舗の状況をひと目で把握することが可能だ。

たとえば全店舗サマリでは、エリアの人気と売り上げ目標のマトリクスから、各店舗をマッピングする。リクルートの持っているエリアのデータから、地域の活性度を分析し、店舗経営がエリアの影響によるものなのか否かを判断できるというわけだ。「エリアへ人の流入は多いが目標を達成できていない店舗」「目標は達成できているがエリアが下火になってきている店舗」などを調べる際にも役に立つ。

  • 全店舗サマリ画面

    Airメイトのデモ画面。左上にあるのがエリアと売り上げの店舗マトリクス

また、個別の店舗では集客数や客単価の増減をはじめ、人件費、予約キャンセル率、電話不成立件数、ファーストドリンクの平均提供時間といった詳細なデータまで可視化できる。これらの分析データを用いることで、「大人数の予約が大きく下がっているので、宴会プランを充実させよう」といった改善策を打てるようになるわけだ。

メニュー分析では、一緒に注文されやすい商品や客単価が上がりやすい一品を導き出し、それらを自動でハンディに表示させることも可能だ。そのため、アルバイトを始めて数日のスタッフでもメニューのレコメンドができるので、顧客満足度向上にもつながる。

  • 店舗別のデータ

    店舗別のデータ

  • メニュー相性分析

    メニュー相性分析

AirメイトにBigQueryを取り入れた2つの理由

Airメイトの店舗データ分析で使われているのが、Googleが提供するデータウェアハウス「BigQuery」だ。BigQueryはクラウド上にある大規模なデータ分析に特化したデータベースで、大量のデータ分析に向いているという。10億行程度のアクセスログであれば2~3で解析するので、企業に蓄積されているペタバイト級の情報でも取り扱いやすい。また、データを保存しておくクラスタが仮想的に1つになっているので、社内でのデータ共有が促進されるというメリットもある。

  • BigQueryの利点

    BigQueryの利点

「AirメイトにBigQueryを取り入れた理由は大きく2つあります」と甲斐氏。

「1つめは技術面です。元々、非エンジニアでも数十行のコードを書くだけで、何十万店のデータを一瞬でさばいてユーザに届けられるようにしたいと考えていました。また、AIを使いたいときもシームレスに使えるものを考えると、Google Cloud Platform(GCP)一択でした」

AIを使ってデータから来客数を予測できれば、スタッフの人員調整も可能。店舗経営コストのうち大きな比重を占める人件費をうまくコントロールすることもできるだろう。

「もう1つは金銭的・人的なコスト面。BigQueryは運用レスのサービスで、従量課金制なので使用した分だけ支払えばいいわけです。今回のケースでは、ほかのサービスと比べてだいぶ費用を抑えることができました。また、SaaS型のフルマネージド型なので運用の人員は必要ありません。ビジネスロジックを磨くことにフォーカスできる点も魅力でした」

データは集めてまとめるだけでなく、分析結果をビジネスに生かせて初めて価値が生まれる。解析するだけで多くの時間や人的リソースを割いていては、本来の目的である知見を導くまで至らない可能性もある。BigQueryであれば、インフラの設計・運用に時間を取られず、社内の分析負荷をかけずに、ユーザーが使いやすい形へデータを加工することができるのだという。

ちなみに、今回のAirメイトを開発するにあたって、費やした時間はおよそ3カ月。メンバーは4人だった。

まずは飲食店を対象に、2018年春から提供開始される予定のAirメイト。ゆくゆくは美容分野や旅行分野にも展開していく予定だ。