東北大学は2月2日、植物が飢餓を生き抜くために、オートファジーを活性化することで産み出したアミノ酸をエネルギーとして利用していることを明らかにしたと発表した。
同成果は、東北大学学際科学フロンティア研究所の泉正範 助教、同大学大学院農学研究科の石田宏幸 准教授らの研究グループらの研究グループによるもの。詳細は日本の学術誌「Plant & Cell Physiology」に掲載された。
植物は、光合成によって太陽光エネルギーを取り込むことで生きている。農業生産の現場において、日照不足や水害といった異常気象、それに伴う環境変化は、時に光合成によるエネルギー獲得を強く阻害することがある。
そのような環境変化に強い作物を産み出していくためには、植物がエネルギー不足、つまり「飢餓」に適応するための仕組みを理解する必要がある。
今回、研究グループは、モデル研究植物シロイヌナズナを用い、飢餓時の植物オートファジーの誘導と、植物体内のアミノ酸含量の変動を調査した。そして、飢餓時にオートファジーが働くことで葉緑体のタンパク質が取り壊され、タンパク質の構成成分であるアミノ酸が生じることを証明したとしている。
また、生じたアミノ酸のうち、BCAAと呼ばれる分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)が、それらをエネルギー源として消化する「異化代謝」を通して特に重要なエネルギーとなることを示したという。
さらに、実際に植物が飢餓を乗り切る力を調べてみると、オートファジーが行えない植物、分岐鎖アミノ酸をうまく利用できない植物は長期間の飢餓を乗り越えることができず、どちらも異常になった植物はより早く死んでしまうことが明らかになった。
物写真。左から、野生型植物、オートファジーと、アミノ酸をエネルギーとして消化する異化代謝の両方を行えない二重変異体 (出所:東北大学Webサイト)|
このことから植物は、光が不足する時には光合成を行えない葉緑体を一時的に取り壊し、産み出されるアミノ酸を代わりのエネルギーとすることで飢餓を乗り切っていると考えられる。
今回の成果を受けて研究グループは、今後、オートファジーの機能を制御する技術を構築していくことで、植物のアミノ酸利用を改変できる可能性が期待されるとしている。