アジレント・テクノロジーは1月25日、近年、関心が高まっている食品や医薬品の包装資材から食品や医薬品へと移行する化学物質の安全性を担保するソリューションの提供に国内でも注力していくことを明らかにした。

こうした移行する物質について同社では、「抽出物(Extractables)」や「浸出物(Leachables)と呼んでいるほか、それらを併せたものについては「溶出物(E&L)」と呼んでいる。ちなみに、抽出物は、接液表面の材料から過酷な条件下で抽出される可能性がある化学成分を意味した言葉で、一方の浸出物は実際の製造工程などの条件のもと、最終製品から検出される化学成分を意味する言葉であり、この2つの違いについて、同社市場開発グループの郡明雄氏は、「抽出物の中に浸出物が含まれるのが基本だが、浸出物には未知の物質が見出される場合もある」と説明する。

抽出物の供給源として考えられるのは、プラスチックやエラストマー部品(モノマー、高分子開始剤、可塑剤など)、インクや接着剤、分解生成物などであり、近年、医療機器や食品器具・包装、医薬品容器包装、バイオ医薬品(製造工程でのシングルユースシステム)、再生医療、皮膚接触を有するウェアラブル機器などでE&Lの問題が取りざたされているという。

抽出される物質としては、内分泌かく乱や遺伝毒性(変異原性)、発がん性などを有するものも存在しており、郡氏は、「さまざまな抽出条件、分析方法をもとに、多角的に解析を行う必要がある」とする。

  • アジレントにおけるE&Lの定義
  • E&Lとして解析する必要がある物質イメージ
  • アジレントにおけるE&Lの定義とE&Lとして解析する必要がある物質イメージ (資料提供:アジレント)

一方で、食品や医薬品の安全の確保に向けた規制を当局や、業界がさまざまな見地から定める動きも世界的に活発化してきている。そうした動きに対し、同社も欧州ならびに米国に、グローバル基準の動向を監視するチームを配置し、常に最新動向をチェックしているとのことで、そうした情報をもとにしたハードウェアやソフトウェア、消耗品などを含めたパッケージソリューションを開発、カスタマに向けて提供を行っているという。

  • E&L分析に向けたアジレントの製品群

    E&L分析に向けたアジレントの製品群。このほかにもクリーンなバイアルなどの消耗品も提供している (資料提供:アジレント)

例えば、分析対象が高揮発性(VVOC)や揮発性(VOC)のものであれば、GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を、半揮発性(SVOC)や不揮発性化合物/イオン性であればLC/MS(液体クロマトグラフ質量分析計)を、元素分析であればICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)といった具合に使い分けを推奨しているほか、収集したデータの分析/解析ソフト「Mass Hunter」やパーソナル化合物データベースライブラリ(PCDL)などを組み合わせることで、E&L同定の省力化といったことことも可能としている。

  • E&L分析の課題と現状
  • それぞれの分析対象に対する対応技術のイメージ
  • E&L分析の課題と現状、ならびにそれぞれの分析対象に対する対応技術のイメージ (資料提供:アジレント)

なお、「E&Lは、化学や食品を横串しした課題として存在しており、アジレントとしては、ハードウェア、ソフトウェア、消耗品、規制情報などをパッケージとしてカスタマに紹介できる絶好の機会と考えており、さまざまな製品を組み合わせたクロスプロダクトとして、さまざまな市場に統一的なメッセージを出していくことで、存在感を高めていきたい」(同氏)としており、今後は、これまで以上に積極的にソリューションとして国内でも展開していきたいとしていた。

  • ハードウェアやソフトウェアのみならず、規制対応やサポート、消耗品などトータルのソリューションとして提供

    ハードウェアやソフトウェアのみならず、規制対応やサポート、消耗品などトータルのソリューションとして提供することで、E&Lに対するカスタマのニーズを一気に解決することで、存在感を高めることを目指す (資料提供:アジレント)