NECは1月10日、人工衛星を活用した宇宙利用サービス事業の拠点として、衛星の運用業務を行う「NEC衛星オペレーションセンター」を開設することを発表した。
NECナショナルセキュリティ・ソリューション事業部に永野博之 事業部長は、「2017年に"衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(衛星リモートセンシング法)"と"宇宙活動法"が施行され、従来、宇宙を知っている会社しか参入できなかった、宇宙利用に対する障壁が低くなり、観測衛星などから得られるデータの利活用が今後、期待されるようになる。そうした時代に、宇宙を可視化し、ユーザーに分かりやすくすることを目指し、今回、同センターを開設することを決定した」と、今回の背景を説明する。
NECは長年にわたって人工衛星や搭載機器の製造や地上システムの構築を手がけてきたが、同センターでは、そうしたノウハウを、多くのユーザーに活用してもらうことを1つの目的としており、当初は2018年1月17日に打ち上げが予定されている高性能レーダ衛星「ASNARO-2」の本格稼動時期より、同衛星の運用業務を行っていくことを計画している。用いられる運用システムは、同社の地上システム構築ノウハウを集約して標準パッケージ化した「GroundNEXTAR」で、共通基盤ソフトウェアの上に「衛星管制ソフトウェア」「ミッションデータ処理ソフトウェア」「ユーザインタフェースソフトウェア」の3種類のソフトを、ニーズに応じて導入できる柔軟性を有している。また、オプションとして、「撮像画像可視化」も用意。こちらは、衛星の位置情報などを3次元映像としてみることができるようにしたものとなり、宇宙になじみのないユーザーでも、衛星の位置や撮像範囲などを分かりやすく説明できる機能となっている。
また、取得するデータのセキュリティを鑑み、オペレーションセンター内にサーバなどのデータ処理設備は持たず、同社のデータセンターに設置することで、信頼性と保全性を高めている。さらに、BCP/ディザスタリカバリの観点から、同社事業所内にバックアップセンターを設置。そちらからでも、随時、対応を図ることを加納としている。
このほか、同社は宇宙利用サービス事業の強化として、2015年に設立した「日本地球観測衛星サービス(JEOSS)」と協力して、2018年9月より、ASNARO-2で撮影した画像の販売も手がけていく予定としている。
先述の永野氏は、「今回の事業強化により、NECは、人工衛星などの製造、運用、可視化、そして取得データの販売まで一元化して行う日本で初めての会社となる」と、NECの強みをアピールする一方、「日本の産業界の発展に向けて、競合会社も含めて、宇宙の活用という側面から盛り上げていきたい」としており、JEOSSへの競合他社からの参画なども、要望があれば、受けていく、ともしており、日本全体で宇宙の活用に向けた機運を盛り上げていくことで、ビジネスの拡大を図って行きたいとしている。
なお、同社では、今後3年間で累計50億円の売り上げを目指すとしている。この売り上げは、画像データの販売ならびに地上システムの販売で実現する金額としているが、今回の地上システムのパッケージ化のほか、すでにASNAROシリーズで採用したNEC標準バス「NEXTAR」も有しており、こうしたパッケージ品を組み合わせて販売していくことで、従来よりも安価に宇宙を活用できる体制を整え、宇宙を利用したいという、新興国をはじめとした国外も含めたユーザーの拡大を目指したいとする。
また、永野氏は、「この2年間が勝負。ここでいかに黒字化するかがポイント。それができなければ、ロケットや射場の選定などを含めた、サービスの拡大や、ASNARO-3の開発、といった将来のことに進めない」とコメントしており、この2-3年は、ASNARO-2の運用によるノウハウの蓄積と、取得画像の販売拡大に集中して、地力を蓄えていきたいとしていた。