2017年11月15日から17日にかけて、パシフィコ横浜にて開催されている最先端の組込技術/IoT技術にフォーカスした総合技術展「ET 2017」「IoT Technology 2017」において、ザイリンクスは、日本初となるRFクラスのアナログ機能を統合したAll Programmable SoCである「Zynq UltraScale+ RFSoC」の実デバイスを用いたデモを公開している。

このデモはRFSoCに搭載されているDACから3.932GSps/キャリア周波数(Cf)1.1GHzを出力し、それを出力3.9632GSpsで動作するADCに入力し、FFTをかけて、その結果をディスプレイに表示する、というもの。5GのMIMO(4GSps、8×8)をターゲットとしたデモで、搭載されているADCやDACが、一般的なアナログ半導体メーカが提供するデバイスと同程度の性能を実現しているほか、RFとFPGAが1チップ化されているため、従来アナログとFPGAの接続に必要としていたJESD204準拠のインタフェースを不要にできる(=トランシーバを不要にできる)ことから、ボードの簡略化などを実現できるようになる。

RFSoCのデモの様子。動作している様子を見ることができるRFSoCのデモは、今回が日本初になるという

また、RFSoCではなく、「Zynq UltraScale+ MPSoC」を用いたデモも多数、同社ブースでは実施している。例えば、4K60p対応のH.265/H.264ビデオコーデックデモでは、H.265とH.264のハードIPを用いて、4K30pと1080p@30fpsのマルチ動画を同時にデコード/エンコードし、ネットワーク経由でストリーニング配信するといったことを行っているが、デモ環境の消費電力は5W、CPUの使用率も20%程度で、実現しているという。

MPSoCを用いたH.265/H.264ビデオコーデックデモ。2つのストリームがあり、1つは4K30pでH.264/AVCデコーダ→H.265/HEVC→RTPパケット化という順での送信側の処理、もう一方は10880p@30fpsでH.265/HEVCデコーダ→H.264/AVCエンコーダ→RTPパケット化という順での送信側の処理となっている

さらに、パートナーによるデモなども複数展示。レグラスが、MPSoCを用いたディープラーニング用インテリジェントカメラ「EigerII」を用いたデモを行っているほか、OKIアイディエスは産業機器向けマルチカメラ用ビデオアプリケーションプラットフォームを、フィックスターズがZynq-7000を用いて、エッジコンピューティングでアナログデータ解析の課題を解決することを可能としたソリューション「Olive@Factory」を、イーソルトリニティによるANSYSの機能安全分析ツール「medini analyze」を活用した自動車/医療/産業機器向け機能安全対応支援サービスなどがデモ展示されている。

レグラスのMPSoCを用いたディープラーニング用インテリジェントカメラ「EigerII」のデモの様子(左)と、モジュール単体(右)。デモではファンが回っているが、その消費電力はARMコアを動作させる状態で7W、FPGAのファブリックまで動作させると10W程度になるためとのこと。これは、ラーニングをかねた使用条件であるためで、実際の現場などでの活用においては、ファンではなく、筐体と連動させる形での放熱を行う形になるということであった

Olive@Factoryは、工場内のセンサのデータをエッジノードで取り込んで、リアルタイムで機能低下や異常兆候の傾向を分析するのに必要なデータのみをネットワークを介して閲覧することができるというもの。現在のバージョンはPoCのような段階のもので、すでにクローズドな環境での先行ユーザーでのテストは進められているものの、実際に広く市場に提供するのはストレージの一体化や処理パフォーマンスの向上などが図られる次期バージョンからになるという。一方のイーソルトリニティの機能安全対応支援サービスは、各業界で求められる認証試験への合格に向け、顧客の開発フローに併せて、半導体(MPSoC)の段階から規格に沿った機能安全が実現できているかを調査するもの。デモではISO26262の認定に向けた機能安全分析を見ることができた。

Olive@Factoryのデモ。黒い箱状のものがエッジコンピューティングを担当する「Olive@Factory」。使いたいアプリケーションによって利用するデバイスはZynqでもFPGAでも変更が可能。センサ数の変更やタイムスタンプの整合性などソフトウェアベースでの対応が柔軟にできるため、生産の度合いに応じたメンテナンス性を容易に確保できるようになる

このほか、同社ブースではZynq-7000を用いたモータ制御を体験可能なCコードベースのプラットフォームの紹介デモも実施されている。こちらは、手軽にモータ制御を試してみたい、というニーズに対応するために用意された環境一式を紹介するもので、CコードなどはGitHub上に公開されており、対応ボードを入手した後、こうしたコードを活用することで、試すことが可能だという。

Zynq-7000を用いたモーター制御プラットフォームデモ。C言語で記述したモーター制御アルゴリズムを高位合成ツールを使用してハードウェア( FPGA部)に実装し、高速動作を実現している