東京工業大学(東工大)は11月6日、ゼブラフィッシュを用いて骨芽細胞の前駆細胞を発見し、その働きを解明したと発表した。

同成果は、東京工業大学生命理工学院 博士後期課程の安藤和則氏、同 川上厚志准教授らの研究グループによるもので、11月2日付の米国科学誌「Developmental Cell」オンライン版に掲載された。

魚類やイモリなどの両生類は、高い組織再生能力を持ち、手足などの器官を失っても、もとどおりに完全に再生できる。しかし、組織が再生する際に細胞がどのような源から供給されているのかは、これまでほとんどわかっていなかった。

今回、同研究グループは、ゼブラフィッシュのヒレの再生をモデルとして、遺伝学的な細胞標識法で再生組織の細胞(OPC)を標識して、細胞を長期にわたって追跡した。この結果、OPCは、個体発生の初期には体節にあり、個体の成長とともにヒレや鱗、その他の骨組織付近の微小環境に休眠状態で保存されるが、組織に傷害を与えるとOPCは微小環境から移動して、骨芽細胞を形成して骨を作り、さらにOPC自身も自己複製して、新たに微小環境を形成することがわかった。

さらに、この細胞を長期に渡って追跡すると、OPCは再生時だけでなく、正常な組織が骨組織を新生する恒常性維持の際にも、骨芽細胞を供給していることがわかった。OPCは、成体の骨を再生するとともに、骨を恒常的に維持する重要な役割を果たしているといえる。

この仕組みは、ヒトを含む他の脊椎動物でも同様の仕組みがあると考えられることから、同研究グループは、今後さまざまな骨疾患の原因解明や再生医療の進展に寄与する可能性があるとしている。

ゼブラフィッシュにおける骨芽前駆細胞(OPC)の源と骨再生 (出所:東工大Webサイト)