クラリベイト・アナリティクスは9月20日、近い将来ノーベル賞を受賞する可能性の高い研究者が選出される「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」を発表した。
同賞は、同社の学術文献引用データベース「Web of Science Core Collection」をもとに、論文がどの程度引用され、学術界にインパクトを与えたのかなどを考慮し、ノーベル賞クラスと目される研究者を選出するもの。昨年までは、トムソン・ロイター引用栄誉賞という名称で発表されていたが、同賞を担当する知的財産事業部が2016年にクラリベイトとして独立したのに併せて名称が変更された。
同賞はノーベル賞の科学系4賞(医学・生理学、物理学、化学、経済学)と同じカテゴリで構成されており、2002年以降、毎年9月に発表されている。今年で16回目となり、同賞の受賞者のうち、これまでに43名が実際にノーベル賞を受賞している。
今回、新たに有力候補として加えられたのは、「医学・生理学」で3トピック4名、「物理学」で3トピック5名、「化学」で3トピック7名、「経済学」で3トピック6名の合計22名。受賞者の国別内訳は、米国15名、英国2名、ロシア2名、日本、ドイツ、オランダ、韓国がそれぞれ1名となっている(ロシアとドイツは同一人物)。
桐蔭横浜大学医用工学部の宮坂力 特任教授 (提供:クラリベイト・アナリティクス) |
日本の1名は、桐蔭横浜大学医用工学部の宮坂力 特任教授で、トピック内容としては「For their discovery and application of perovskite materials to chieve efficient energy conversion(効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用」で、同氏が2009年ならびに2012年に発表した論文の被引用数が高いことが受賞の決め手となった。
ペロブスカイトは近年、次世代太陽電池として期待されている材料で、imecがシリコンとのハイブリッド型で変換効率23.9%を達成(4cm2)するなど、実用に耐えうる性能を出せるようになってきたことで、この数年で一気に論文数、引用数ともに増加。被引用論文の上位1%の論文が高被引用論文とされるが、同分野ではコンスタントに被引用論文の20%を占めており、これは期待値の20倍であり、インパクトの波及効果が高いとしている。
また、引用した論文を発表する研究機関も年々増加。2010年には10機関であったが、2017年には904機関に増加。日本、中国、韓国、米国、欧州のほか、インド、南米、北欧、アフリカといった研究機関でも引用されるようになっているという。