日立製作所は9月14日、SiCを用いたCMOS集積回路技術(SiC-CMOS)を開発したことを発表した。
同成果の詳細は、2017年9月17日~22日にかけて米国ワシントンDCで開催される国際会議「ICSCRM(International Conference on Silicon Carbide and Related Materials)」にて発表される予定だという。
半導体の処理を行うCMOS集積回路は、主にSiで製造されているが、高温や放射線といった影響を受けやすく、宇宙や発電所といった苛酷な環境での安定動作が課題とされてきた。今回、同社は、そうした高温や耐放射線性といった特徴を有するSiCを用いたCMOS集積回路を開発。具体的には、n型MOSに加え、パワー半導体で培った不純物注入や熱処理技術を活用することで、データ処理性能が高いp型MOSを新たに開発したほか、耐放射線性の向上を目的に、集積回路を電気的に保護する絶縁膜の中に、放射線の影響を緩和する保護電極を挿入したデバイス構造を採用し、高温・放射線の影響を受ける過酷環境下におけるSiC-CMOS集積回路の安定動作を実現したという。
実際に、同技術を用いて、センサからの信号を増幅処理するオペアンプを試作したところ、要求される信号処理性能を維持しつつ既存のSi製オペアンプの100倍にあたる30kGyまで正常動作する放射線耐性を確認したとする。
なお、同社では、同技術により、自動車・産業機器を始め、原子力発電や航空宇宙といった産業において、過酷環境下におけるセンシングデータの高精度な信号処理が可能となるとしており、今後、高温や高放射線場などの過酷環境に対応したエッジコンピューティングシステムを構築し、社会インフラシステムの高信頼化につなげていきたいとしている。