立命館大学と順天堂大学は、ロコモーティブ・シンドローム(ロコモ)予防のための世代別3分間体操「ACTIVE5」を発表した。

介護対象となる寝たきり高齢者を増加させないために、昨今「ロコモ」というキーワードの周知が図られている。これは運動器の衰えで歩行困難となり、要介護リスクが高まっている状態を指す。

ロコモの概念図

この体操がはじめてお披露目されたのは、JSTフェア 2017(8月31日~9月1日まで開催)の会場内に設けられた、運動のカルチャー化を目指す「アクティブ・フォー・オール拠点」のブース内。これは、運動が続かない、始められない人が多く存在するなか、義務感で渋々するのではなく、運動を自発的に「したくなる」気持ちを創出するための取り組みを行っているグループだ。

同拠点に参画し、「ACTIVE5」の考案に関わった順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 町田修一 先任准教授は、高齢化問題というのは要介護者が増えることによって引き起こされているため、単に「何歳まで生きたか」を示す平均寿命ではなく、ロコモに陥らず自立した生活を送ることができる年数である「健康寿命」を延ばす必要があると指摘した。

平均寿命ではなく、自立的に活動できる健康寿命を延ばすべきと指摘

そのためには、社会全体の問題である運動不足を改善する必要があり、その手立てのひとつとして「ACTIVE5」を発表したのだと明かした。

寝たきり予備軍には子ども・若者も含まれる

座る時間が長くなると、喫煙と同等の害があるという報告も

そして、長時間座り続けることは、喫煙と同等の害があると警告。この10年で糖尿病患者の割合が6人に1人から4人に1人と大幅に増加しているが、これは自動車の性能向上や公共施設内のエレベーター整備などで社会の利便性が上がり、生活の中で体を動かさなくて済んでしまう割合が増えているからだと語った。近代化により運動の必要が低下しても遺伝子配列は昔のままであることから、生活習慣病の割合が増えているという。

主な生活習慣病のリスト。がんや心疾患、脳血管疾患といった命に関わるものから、痛風や肥満といったものまであるが、赤字のものは特に運動不足から引き起こされるとのこと

運動不足の危険性は若年期から始まっているという

そして、喫煙と同様、成長途上にある若年者の運動不足は、大人と比べて顕著に健康を損なう点も指摘した。昨今の就学児の運動習慣は部活動の参加有無などで運動のする・しないがきっぱり二分しているような状況だという。子どもの体力テストの結果が昔より落ちた、というのは新聞などの定番ネタとも言える内容だが、生活習慣病で直接的に健康を損なう恐れがあるとした。

3世代で一緒に取り組める3分間体操

「ACTIVE5」は、5種類の運動で構成されている3分間の体操。特徴は、子ども、大人、高齢者と3パターンの振り付けが用意されている点で、3世代が一緒に行った際、要所要所で振りが一致し、ダンスのような達成感が得られる。

三世代で「ACTIVE5」に取り組んでいる様子。年代にあわせた強度の運動が組み合わせられているため基本は動きがバラバラだが、要所要所でぴたりと動きが合わさるところが作られている

子ども向けはヘビやカニなど、楽しく取り組めるような振り。大人向けは目的意識持ってとりくめるような、強度がやや高めの運動になっている。シニア向けは取り組んだ後に疲れすぎないよう、ストレッチや深呼吸を多く取り入れている。

ラジオ体操よりもやや難しくなっており、これは「みんなでもっと動きをそろえよう」と思えるように、成長を感じられるような難易度設定にしているため。5種類の運動が行われてはじめてロコモ予防になる構成となっており、およそ一か月くらいエクササイズを続けると、例えば片足立ちが上手く出来なかった人が、いつの間にかできるようになっているようなものだという。

下の動画は大人向けの「ACTIVE5」動画だが、子供向けシニア向け全世代を合わせたバージョンがYouTubeにアップされている。

短い時間と少しのスペースでさまざまな筋肉を刺激できる構成となっていて、見た目より負荷は大きい。取り組んでみたところ、短い時間で効率よく運動しているという実感が得られた。日頃の運動不足が気になる人は一度取り組んでみてほしい。