信州大学は8月29日、酸化グラフェン/グラフェンハイブリッド積層構造水処理膜の簡便な生成法開発と高性能化に成功したと発表した。
同成果は、信州大学 遠藤守信特別特任教授らの研究グループによるもので、8月28日付の英国科学誌「Nature Nanotechnology」に掲載された。
海水淡水化や河川水の有効利用など、現在、高度水処理では高分子膜が中心的に使用されているが、地球規模での水資源不足の背景から水処理膜の耐久性をより高め、造水コストを一層低下できる革新的水処理膜の開発が求められている。
今回、同研究グループは、グラフェンと酸化グラフェンを複合して積層ナノ構造をうまく調製することで、高度な水処理機能を持つナノカーボン膜の開発に成功した。具体的には、最適に配合した酸化グラフェンとグラフェンの混合液を多孔性高分子基材上にスプレーし、自己組織化させることで、厚さ数10nmの薄い活性膜を形成し、これによって食塩水中の塩分や水中の色素を高い選択性で除去することができる。同製法では、目的に合わせて膜の機能を制御することが可能で、現時点では性能的に現行の逆浸透(RO)膜に及ばないものの、水処理における広範な要請に対応可能であるという。
同研究グループは、海水淡水化処理のほか、随伴水処理や各種産業分野における処理膜などとして広範な応用展開が期待されると説明している。今後、透過物質の選択性に加えて、脱塩率および透水性のさらなる向上を図っていきたい考えだ。