情報通信研究機構(NICT)などは8月22日、半導体レーザから生じる光カオスを用いて、適応速度1GHzを実現する超高速フォトニクスを応用した強化学習に成功したと発表した。

同成果は、NICT 成瀬誠主任研究員、埼玉大学大学院理工学研究科 内田淳史教授、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 金成主特任准教授らの研究グループによるもので、8月18日付の英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

強化学習とは、機械学習の手法のひとつで、未知な環境で試行錯誤をしながら学習を行う方法。これまで計算機上のアルゴリズムとして実現されてきたが、高速化には大きな壁があった。

今回、同研究グループは半導体レーザを用いた際に生じる光のカオス現象に着目。光のカオス現象が生み出す乱雑な信号と、独自に開発した強化学習方式を組み合わせることで、「2本腕バンディット問題」と呼ばれる当たり確率の未知な2台のスロットマシンから当たり確率の高い台を選ぶ問題を、高速にかつ物理的に解決をすることに成功した。

レーザカオス現象の超高速性により、情報が入力されてから出力されるまでの時間が1ナノ秒という、高速な意思決定が確認されている。また、仮想的に生成した高速な擬似乱数に比べても優れた性能を示すことも確認されている。

2本腕バンディット問題を含む多本腕バンディット問題は、ワイヤレス通信における周波数の割当て、データセンターでの計算資源の割当て、ロボット制御、Web広告など、重要な応用の基礎になっていることから、これまでにも熱心な研究が行われてきている。同研究グループは、今回の成果について、高速なコンピューティングのため計算資源を瞬時に調停するアービトレーションや無線通信における周波数の瞬時な割当てなど、AIやIoTの基盤技術として大きく貢献することが期待されると説明している。

レーザカオスを用いたシステムと超高速な強化学習の実現 (出所:NICT Webサイト)