国立環境研究所や東京大学などで構成されるグループは7月27日、世界最大級の都市である東京圏からの二酸化炭素(CO2)排出量をモニタリングするために、東京スカイツリーにおいて、大気中の温室効果ガスと関連物質(炭素同位体、酸素、一酸化炭素など)の観測を開始したと発表した。

化石燃料の燃焼によって都市と発電所から排出されたCO2のシミュレーション例。地表から高度1kmの層におけるCO2濃度(ppm)で、赤が濃いほど濃度が高い。(出所:国立環境研究所Webサイト、(c)研究所地球環境研究センター物質循環モデリング・解析研究室シャミル・マクシュートフ室長)

同グループは、大都市レベルといった詳細なスケールの排出量監視には、人工衛星観測データに加えて、高精度な地上観測との連携が重要であるが、大都市圏での温室効果ガスの地上観測の整備は遅れているのが現状であることを受け、世界最大級の都市である東京圏からのCO2排出量をモニタリングするために、東京を代表する高所である東京スカイツリーで温室効果ガスと関連物質の観測を開始したとしている。

また、CO2濃度だけでなく、CO2中の放射性炭素同位体比と大気中酸素濃度を高精度で分析することで、CO2排出量を排出源別(植物の呼吸から出たものか、化石燃料を燃焼して出たものか)および燃料別(天然ガスか、石油か)に推定することも可能だという。

パリ協定で合意された世界平均気温の上昇を抑える目標を達成するためには、温室効果ガス排出量の削減が不可欠であるとしており、このような地上での多成分かつ高精度な大気観測と、平成30年度打ち上げ予定の温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」の全球観測データを組み合わせることで、温室効果ガスの吸収・排出量の把握精度の向上につながることが期待されるとしている。