科学技術振興機構(JST)は、京都大学、ノリタケカンパニーリミテド、IHI、日本触媒、豊田自動織機、三井化学、トクヤマが共同研究により、アンモニア燃料電池の世界最大規模の発電に成功したことを発表した。
水素を多く含むアンモニア(NH3)は、エネルギーキャリアの候補として注目されている。アンモニアを燃料として発電しても水と窒素しか排出しないため、炭化水素を利用した燃料電池に比べて二酸化炭素の排出量が少ない。
今回、研究グループが大規模発電に成功した直接アンモニア燃料電池は、電解質であるジルコニアの片面に取り付けた燃料極に発電の燃料となるアンモニアガスを直接供給し、反対側の空気極に空気を供給することによって、両極の間で電力を発生させるという原理に基づいたもの。
これまでにも小規模な発電は試験されてきたが、今回の技術はこの燃料電池単セルを30枚積層し、温度分布を最小として、アンモニアが各セルに均等に流れるようにした結果、より実用規模に近い1kWクラスのSOFCスタックへ直接アンモニアを供給し、発電した。このスタックに直接アンモニア燃料を供給して発電を行ったところ、純水素と比べて同等レベルの良好な発電特性が確認されたほか、燃料電池の直流発電効率は1kWの規模ながら50%を超える高い値が達成された。さらに1kW級評価システムで、1000時間の安定した連続運転に成功した。
また、異なる燃料供給方式としてアンモニアと空気の混合ガスをハニカム構造の触媒に供給して部分燃焼する触媒およびオートサーマル反応器(自己熱反応器)を開発し、500℃の出口ガス温度を達成するのに130秒間の高速起動が可能であることを証明した。反応器により生成した水素を含む混合ガスをSOFCスタックに供給し、この燃料供給方式でも1kW級の発電に成功した。
なお、研究グループは同技術に関して、将来アンモニアを燃料とするSOFCの外部加熱によらない高速起動の可能性を示すものだと説明している。今後は、アンモニア燃料を用いて1kW級のコンパクトなパッケージ実証機を作製し、運転を行う予定だという。また、将来的にアンモニア燃料電池は、分散型電源として業務用の発電などへの展開も期待されるとしている。