京都大学は、同大学高等研究院 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)イーサン・シバニア教授、同ベナム・ガリ特定助教、エネルギー科学研究科修士課程の脇本和輝氏らの研究グループが、MOFというナノサイズの粒子をPIM-1という高分子材料に適切な条件で添加することで、ガスの分離精度を大幅に向上した混合マトリクス膜を開発することに成功したことを発表した。この成果は6月6日、英国の科学誌「Nature Energy」に掲載された。
この研究は、環境省CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業、およびJSTさきがけ「超空間制御と革新的機能創成」の支援を受けて行われたもの。
これまでの高分子膜を用いたガス分離技術は、ガスの処理速度が遅すぎたり高処理速度のものはガスを分離する精度が低かったりで、エネルギー効率のよい二酸化炭素分離を行えず、莫大な量の排出ガスを処理するには不向きであった。また、大規模な二酸化炭素分離プロジェクトに応用するには、費用対効果の点で問題があった。
研究グループが新たに開発した、混合マトリクス膜(MMMs)と呼ばれる高分子薄膜を用いた「フィルター」は、ガスの処理量や分離精度だけでなく、コスト面においても、二酸化炭素の分離・貯蔵(CCS)技術に革命を起こす可能性を秘めているとしている。
今回、研究開発を率いたイーサン・ シバニア教授は、「世界が抱える二酸化炭素の問題の深刻さは、容易に理解できる。世界最大の火力発電所は、1日にギザの大ピラミッド12杯分もの二酸化炭素を排出する。そして、500MW級の巨大な火力発電所が、世界で5000基以上もあり、その数は今も増えている。 分離・貯蔵されるべき温室効果ガスの量は計り知れない。」とコメントしている。