北海道大学は、同大学大学院農学研究院 津釜大侑助教らの研究グループが、食用アスパラガスの遺伝子の中で雄株のみに存在し雌株に存在しないものを発見し、この遺伝子が雄しべの発達に関与することを解明するとともに、アスパラガスの性決定遺伝子の候補であり農業や育種にも有用であると発表した。同成果は学際的電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。
若茎を食用とする多年生の作物である食用アスパラガスには、雌花のみを着ける雌株と雄花のみを着ける雄株がある。その性決定は少数の遺伝子により制御されることが示唆されていた一方で、それらの遺伝子の実体は長らく不明であった。
津釜助教らのグループは、食用アスパラガスの性決定遺伝子を探索するため、雌花と雄花の遺伝子産物の先行データを再解析した。モデル植物であるシロイヌナズナにおける雄しべの発達に必須の遺伝子と、食用アスパラガス遺伝子についてのデータを比較検討し、性決定遺伝子の候補を発見した。
その遺伝子(AoMYB35) は、食用アスパラガスの雄株のみに存在し、雌株には存在しないということが明らかになったほか、AoMYB35の産物が発達初期の雄花の雄しべにおいて蓄積することも見出したという。すなわち、AoMYB35は食用アスパラガスの雄しべの発達に必須であり、雌花における雄しべの退化は AoMYB35 の欠損に起因するという可能性が示されたことになる。
食用アスパラガスは、開花までに通常1年以上の期間を要するが、AoMYB35をDNA マーカーとして用いることで開花を待たずに雌雄を判別することが可能で、農業生産や育種にも活用できる。また、AoMYB35について解析を進め、これを人為的に活性化又は抑制することができれば、食用アスパラガスの性を転換することができることも考えられ、このような技術も育種等に役立つと考えられるとしている。