アクセルスペースは4月17日、東京都中央区日本橋本町へのオフィス移転を発表、プレス向けに新オフィスの設備を公開した。同社が入居したのは、三井不動産が建設したClipニホンバシビルの2~3階部分。2階には本格的なクリーンルームも整備しており、この新たな地から、超小型衛星の市場拡大を加速させていく。

アクセルスペースが移転したClipニホンバシビル

ビルの壁面には、大きく社名とロゴが掲示されていた

アクセルスペースは2008年、東京大学・本郷キャンパスに近い文京区弥生にて創業。2009年に千葉県柏市(柏の葉キャンパス)、2011年に千代田区神田小川町と移転してきたが、2015年に約19億円という大型資金調達に成功。業務の拡大により社員数が急増、オフィスが手狭となり、移転を検討していた。

同社の中村友哉代表取締役によれば、移転先に求める条件としては、以下のものがあったという。

まず衛星の搬出・搬入のために、エレベータの間口は120cm以上が必要。都心の雑居ビルだと80~90cmくらいの場合が多く、この時点で選択肢は狭くなってしまう。また複数の衛星を同時に製造するため、広いクリーンルームも設置できなければならない。さらに衛星を吊すクレーンを設置するため、天井の高さは2.6m以上は欲しい。

そして何より、「都心」であることにこだわった。同社の営業が訪問する先は東京23区内がほとんどであり、営業効率の面から考えると、オフィスは都心にある方が望ましい。また現在、社員28名のうち7名が外国人だが、東京の中心での衛星開発が魅力だと考えている人もいて、海外からの優秀な人材を確保するためには、安易に地方に移転もできない。

「衛星の開発」という、かなり特殊な業態のせいでもあるが、こうした条件を満たした物件がそう簡単に見つかるはずもない。三井不動産に相談したところ、「既存のビルではニーズを満たせなかったので、いっそのこと作ってしまえ」(三井不動産ベンチャー共創事業部長の菅原晶氏)となり、新しいビルの建設が決まったという。

アクセルスペースの中村友哉代表取締役(右)と三井不動産の菅原晶ベンチャー共創事業部長(左)

建築前に入居が決まったため、前述のようなさまざまな要望を取り入れてもらうことができ、「やる気が出る楽しいオフィスに仕上がった」と中村代表取締役は感謝。「ベンチャー企業は立地や社内環境も評価の重要なポイント。今後の採用でも新オフィスをアピールしていきたい」と述べる。

開放感のある会議室。壁には「ほどよし1号」の撮影画像も

3階は執務室。この写真の右側にも同じようなスペースがある

今回の移転により、オフィスの床面積は約2倍に拡大。衛星を組み立てるクリーンルームは従来、金属フレームとビニールシートで組み立てた簡易的なものを使っていたが、新オフィスでは専用に1室を割り当てた。衛星5機を同時に製造できるだけの広さがあり、入り口には埃を落とすエアシャワーも設置した。

クリーンルームはこの壁の向こう。窓は液晶になっており…

スイッチ1つで半透明にできる。これはなかなか便利

室内には、「WNISAT-1R」のFM(手前)と「GRUS」のEM(奥)があった

クリーンルームの入り口には、ちゃんとエアシャワーまで完備

新しいビルの1階には、三井不動産が近くで運営していたコワーキングスペースの「31VENTURES Clipニホンバシ」が移転し、新装オープンした。中村代表取締役は、「我々は宇宙を使った新しいビジネスを作っていくことを考えている。Clipニホンバシは、いろんな業界から人が集まり、新しい価値を作っていく場。我々とも親和性が高く、利用者とコミュニケーションを取っていくなかで、面白いアイデアが出てくるのでは」と、相乗効果に期待した。

「31VENTURES Clipニホンバシ」のフロアマップ。従来より広くなった