キリンの発表によると、プロテインの市場規模は伸びており、2016年は対前年比33%増の366億円に達したという。粉末の製品が大半を占める市場でドリンクタイプの存在感はまだまだ少ないそうだが、それでもキリンの山形氏は、プロテイン飲料でトップシェアとなる年間40万箱の販売に意欲を示していた。

ターゲット設定から見える課題と可能性

発表会で気になったのは、下に掲げるスライドだ。プロテインボトルでターゲットとする購買層をピラミッドのボトムに黄色で示しているが、両社の思惑通り、この層にプロテインボトルが売れて、購入者が実際に運動を始めるようなことになれば、黄色で示された層はピラミッドの1段上の階層、つまり、「運動を始めている人」の層に移行してしまいそうな気がするのだ。そうなれば、プロテインボトルの購買層は徐々に縮小していく。

プロテインボトルのターゲット層が運動習慣を身につければ、そのボリュームは徐々に縮小していきそうなものだが…

この件について質問してみると、キリンの山形氏とライザップの幕田氏は、「黄色の層がいなくなれば、それはそれでいい」と口をそろえた。確かに、健康に対する意識が高まることは社会的に見ても悪くなさそうだし、キリンにしてみれば階層が上の人に訴求できる商品を売っていけば済む話なのかもしれない。ライザップにとっても、健康に対する意識の高い人はジムの会員として取り込める可能性がある。

プロテインボトルを大ヒット商品にするうえで重要となるのは、おそらく、このピラミッドの水面下に潜む氷山、つまりは運動不足を気にせず、生活習慣を変える意思も持たない層に、この商品をどれだけ売り込むことができるかという点なのではないだろうか。