宇宙航空研究開発機構(JAXA)と日本電波工業は3月10日、真空環境下において宇宙用材料などから放出されるガス(アウトガス)を計測することを目的としたシステム「Twin QCM(Quartz Crystal Microbalance)」を開発したと発表した。

宇宙空間では、プラスチックや接着剤などの材料から放出されるアウトガスに起因するコンタミネーション(汚染)が生じることがあり、観測衛星のレンズなどの光学特性や画質低下を招くことが知られており、材料からのアウトガス発生を出来る限り抑えることが求められている。

そのためには、正確な計測結果に基づく部材選定が必要となるが、アウトガス計測には、従来、水晶振動子を用いた参照用センサと計測用センサの差分を計測することでアウトガスの付着量を計測し、センサ温度を制御することで、物質の付着・脱離特性から何のガスかを同定するQTGA計測法が用いられていたが、2つの水晶振動子センサ間の特性差や温度差が、高精度な計測を妨げる要因となっていたという。

今回開発されたTwin QCMセンサは、1枚の水晶振動子センサ上に参照用電極と計測用電極を設けたツインセンサ方式を採用することで、センサ間の特性差や温度差のバラつきの問題を解消することに成功したという。

なお、日本電波工業では今後、国内外の宇宙開発機関・関連産業向けに販売を行っていくとしているほか、JAXAとの共同開発品であることを示す「JAXA COSMODE」付与製品として、コンタミネーション抑制のためアウトガス計測を必要とする半導体や建材メーカー市場など一般産業分野への展開も行っていく予定としている。

左がTwin QCMセンサの外観、右が専用コントローラ (C) JAXA