米オラクルは3月6日、同社のデータベースの最新版「Oracle Database 12c Release 2(12.2)」を、クラウドサービスをはじめ、「Oracle Cloud at Customer」、オンプレミスを含むあらゆる稼働環境向けに提供開始したと発表した。
日本オラクルは3月8日、米オラクル データベース・サーバー技術担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのアンドリュー・メンデルソン氏による「Oracle Database 12.2」に関する説明会を開催した。
Oracle DB 12.2の出荷は昨年9月にOracle Cloud向け、今年2月にOracle Exadata向け、3月1日にLinux 86版とSolaris SPARC & x86版が開始されており、今回、Windows版がリリースされた。メンデルソン氏は今後、AIXやHP-UX版の出荷も予定していることを明らかにした。
メンデルソン氏はOracle DB 12.2における強化のポイントとして「インメモリ・データベース」「ビッグデータ」「クラウド」を挙げ、それぞれについて説明した。
Oracle DB 12cでインメモリ技術が搭載されたことのメリットの1つとして、同一のデータベース上でOLTPの処理と分析が可能になったことがあるという。パフォーマンスの面では、「ジョインのスピードが最大3倍高速化」「コンプレックスクエリが最大10倍高速化」「最適化された新たなバイナリフォーマットによりJSONクエリが最大60倍高速化」を実現している。
また、ExadataとOracle Cloudにおいては、Active Data Guardスタンバイ上でインメモリが稼働可能になった。これにより、リアルタイムのインメモリ分析をアクティブ-スタンバイ・データベースにオフロードすることできるようになった。
メンデルソン氏はインメモリに関する新たな技術への対応として、不揮発メモリ(Non-Volatile Memory)を挙げた。「インテルが2018年にNVRAMを提供すると言われているが、ストレージとデータベース市場に大きな変革をもたらすだろう。Oracle Databaseでもインメモリ処理をNVRAMで実行できるように開発が進められている」と同氏。
2つ目の強化ポイントである「ビッグデータ」に関しては、Oracle Big Data SQLによって、リレーショナルデータベースに加え、HadoopとNoSQLデータベースに高速にアクセスすることができる点がある。また、すべてのSQLクエリにJSONデータを利用でき、他のデータソースとJSONでジョインすることも可能。今回、Big Data SQLにおいて自動的にJSON構造が解析可能になった。
ビッグデータに関するサービスとしては、HadoopとSpark環境を提供する「Big Data Cloud Service」がある。同サービスには、Cloudera Enterprise Data Hub、Rとプロパティグラフを含む分析機能、データ統合ツールが含まれている。今後、Exadata上で「Big Data SQL Cloud Service」の提供が予定されているという。
3つ目の強化ポイントである「クラウド」について、メンデルソン氏は「Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureはワークロードが最適化されていない。これに対し、われわれのクラウドはデータベースに最適化されたインフラストラクチャをエンジニアド・システムとしてクラウド上で提供している」と、同社のクラウドビジネスにおける特色を強調した。
さらに、メンデルソン氏は同社のクラウドの差別化ポイントとして「マルチテナント」と「Oracle Real Application Clusters(RAC)」を挙げ、Oracle DB 12.2ではこの2つの機能が強化されていると述べた。
マルチテナント・アーキテクチャを用いると、Oracle Databaseをマルチテナント・コンテナ・データベースとして機能させることができ、1つのマルチテナント・コンテナ・データベースに複数のプラガブル(pluggable:着脱可能)・データベース(PDB)を収納できる。つまり、複数のデータベースを統合して、コンテナ・データベースに統合することが可能になる。PDBの数はこれまで256までとなっていたが、最大4096まで利用できるようになった。
Oracle DB 12.2では、大規模な環境に対応するため、「メモリ、CPU、I/Oリソースの優先順位付け」「プライベートクラウドおよびパブリッククラウド間で設定可能な分離性」「アプリケーションコンテナによるPDBでメタデータとデータの共有」が追加された。また、PDBについてはオンラインでホットクローン、リフレッシュ、再配置といった操作が可能になった。
一方、「Oracle RAC」については、12.2より、マルチテナントデータベースに最適化され、何百ものノードにスケールアウトが可能になった。これまで、DWHでRACを利用する場合、64ノードが限界だったという。
加えて、1つの巨大のデータベースを多数の小さなデータベース(シャード)に分割する「データベース・シャーディング」もネイティブで利用できるようになった。
