岡山大学は3月3日、黒鉛から酸化グラフェンを合成する過程を追跡し、黒鉛が酸化されて剥がれていく反応をリアルタイムで観察することに成功したと発表した。これにより、酸化グラフェンの形成メカニズムが明らかになった。
同成果は、岡山大学異分野融合先端研究コア 仁科勇太准教授らの研究グループによるもので、3月2日付けの米国科学誌「Chemistry of Materials」オンライン版に掲載された。
酸化グラフェンは厚さ約1nmの薄片状物質で、近年、電極材料・触媒・潤滑剤・樹脂補強材・熱伝導性材料など多くの用途が検討され、優れた性能を有することが報告されている。しかし、その形成過程は十分に理解されておらず、合成の再現性が低いという課題があった。
同研究グループは今回、添加剤の効果を確認する網羅的な実験を行い、酸化グラフェンの形成には、黒鉛に対して硫酸、過マンガン酸カリウムのみの添加で良いことを解明。さらに、反応温度や酸化剤の量が生じる酸化グラフェンに与える影響も明らかにした。
また、大型放射光施設「Spring-8」のビームラインBL02B2を利用して、その場X線回折実験を行うことにより、濃硫酸中での反応の追跡を実施。この結果、黒鉛の層間は反応後1分以内に拡がり、その後1時間程度かけて乱雑化していくことが明らかになった。また、過マンガン酸カリウムが消費され、酸化が完結するには2時間かかることがわかった。
今回、反応に用いる酸化剤や、反応時間を正確に決定できたことから、酸化グラフェンの連続フロー合成を行うことが可能となった。同研究グループは、送液ポンプを用いて、黒鉛、硫酸、過マンガン酸カリウムを流すことで、流路内で酸化反応を進行させ、出口から酸化グラフェンが連続的に出てくるという、工業化に向けたフロープロセスの開発も視野にいれていると説明している。