東北大学と九州大学(九大)は3月1日、鉄欠乏性貧血の病態の一端を解明したと発表した。

同成果は、東北大学大学院医学系研究科生物化学分野 小林匡洋研究員、加藤浩貴研究員、張替秀郎教授、五十嵐和彦教授、九州大学生体防御医学研究所 佐々木裕之教授らの研究グループによるもので、2月28日付けの欧州血液学会機関誌「Haematologica」に掲載された。

生体内の鉄の約70%は赤血球のヘモグロビン産生に利用されている。食事などから摂取される鉄分はごくわずかであるため、多くの鉄は体の中で再利用されるが、月経時の出血などにより体内の鉄分が大量に失われると鉄欠乏性貧血が引き起こされる。これまで、鉄欠乏性貧血の原因は単なる鉄不足と考えられてきたが、必ずしもすべての女性が鉄欠乏性貧血を発症するわけではないことから、単なる鉄不足のみでは疾患を十分に説明できていなかった。

今回、同研究グループは、鉄欠乏性貧血モデルマウスから採取した赤芽球を使って、網羅的 DNAメチル化解析および遺伝子発現解析を実施。この結果、鉄欠乏状態ではDNAメチル化修飾および遺伝子発現が広範囲にわたって変動していることが明らかになった。また、ヘムに応答する転写因子Bach1が、鉄欠乏により合成が低下するヘムの量に対応してグロビンの合成を低下させることでヘムとグロビンのバランスを調整していることもわかった。

同研究グループは今回の成果について、鉄欠乏性貧血の病態の理解がさらに進み、特に鉄剤による治療に応答しない鉄欠乏性貧血の新たな治療法の開発につながることが期待されるとコメントしている。

鉄の遺伝子発現への関与のイメージ図 (出所:東北大学Webサイト)