東日本大震災で津波被害に遭った宮城、岩手両県のかなりの被災者に抑うつ傾向がみられ、メタボリック症候群(メタボ)の割合も被災経験がない人より高い傾向であったことが東北大学と岩手医科大学が約6万3千人を対象にした大規模調査で明らかになった。大津波により家族・親族や住宅を失った被災者の多くに抑うつ症状がみられることはこれまでも指摘されていたが、今回の大規模調査でその傾向が確認された。大震災6年目を迎えるこれからも継続した「心のケア」の重要性が浮き彫りになった。両大学が1日発表した。
この調査は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)が事業主体となっている「東北メディカル・メガバンク計画」の一環。同計画の長期健康調査は約15万人の参加を目標にしており、2大学の研究チームは今回2013年度から3年間に健康調査した約6万3千人のデータを分析した。
調査は、宮城、岩手両県内各自治体の特定健康診査会場で実施した。宮城県では沿岸部の石巻市、気仙沼市、南三陸町など14市町と内陸部の栗原市など14市町合わせて約3万7200人が、また岩手県では宮古市、陸前高田市、釜石市など沿岸部12市町村と二戸市など内陸部の6市町村の合計約2万5800人が参加、協力した。男女比は男性約37%、女性約63%。男女合わせた平均年齢は60・8歳だった。
調査データ分析の結果、抑うつ症状を示す人は沿岸部、内陸部合わせて26.4%で、その割合は沿岸部の方が内陸部より「統計学上有意」に高かった。大震災を思い出して生活や仕事に支障が出る「心的外傷後ストレス反応(PTSR)」や不眠を訴える人の割合も、沿岸部の方が高かった。
また、メタボリック症候群の割合についても被災者の方が被災していない人より高い傾向が出た。このほか、高血圧の治療中断率が内陸部と比べ沿岸部で高く、高血圧治療中断者の収縮期血圧は、通院中の者に比べて高いことなども判明した。沿岸部の被災者にメタボ割合が高いのは、狭い仮設住宅などに長期間居住しているために日常の運動量が減っていることなどが原因とみられている。
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