シンガポールのPayPalは12月6日、10月3日付で新たな日本のカントリーマネージャーに曽根崇氏が就任したことから、同社の事業戦略を発表するプレスブリーフィングを都内のホテルで開催した。
同社は1999年に米シリコンバレーで設立され、オンライン決済と送金サービスに注力、日本では2010年からサービスを提供している。現在では200以上の国と地域でサービスを提供し、100の通貨で決済が可能だという。グローバルでの決済額は、2015年の時点で2820億ドル(およそ30兆円)で、2016年3Qは25%の成長を遂げているという。
新たなカントリーマネージャーに就任した曽根氏は、ボストンコンサルティングを経て2013年にPayPalに入社している。
同氏は、まず、この1年の同社の取り組みについて説明した。
同社は国内市場において、中小企業/スタートアップ、モバイル、訪日観光の3つの領域にフォーカスしており、中小企業/スタートアップについては、ユーザーニーズや課題を理解するため、JECCICAとともに、中小企業のEコーマスに関するアンケートを1000社以上に対して実施したほか、スタートアップ向けのイベントにスポンサーとして参加。PayPalのプレゼンスを高めるとともに、ニーズを把握してきたという。また、デベロッパー向けの勉強会や交流会も実施したほか、パートナーシップの拡充に努めてきたという。その結果、2015年から2016年にかけては2桁成長を達成したという。
訪日観光に関しては、宿泊施設自社サイトでの予約エンジンとPayPalの連携を行い、昨年は2社、今年は6社と新たに連携し(計8社)、曽根氏は「訪日向けの宿泊施設の8割程度にリーチができている」とした。
また、日本旅館協会と提携し、同協会に加入する2800施設のPayPal利用促進が可能になり、現状は100施設でPayPalの利用が可能になっているという。
そしてモバイルでは、最適化に向けたUXの改善に注力したという。
今後は、日本のビジネスを広げるたけ「オンライン、オムニチャネル、オフラインのカバレーッジの拡大」、「導入企業の利用率向上」、「新しい付加価値の創造」という「3 Dimension」戦略を行うという。
カバレッジの拡大については、パートナーシップを含め、今後はデジタルコンテンツ、デジタルグッズ関連ビジネスの拡大に注力していくという。
曾根氏は、「不正利用の防止面という面で、PayPalはデジタルコンテンツ、デジタルグッズと非常に相性がいい。今後は、より注力していきたい」と語った。
利用率向上については、同氏は「どれだけコンシューマの方に利用いただけるかだ」と語り、利用者数と利用頻度を上げるためのキャンペーンやモバイルを含めた利便性の向上を実施するという。そのため、IDやパスワードをその都度入力しなくても済む「One Touch」を提供していくという。
「One Touch」は同社のサイトで設定することで利用可能になり、180日間、ユーザーパスワードが入力しなくても決済が可能になるという。
付加価値創造の面では、VISAやMaster、アリババと、Facebookとの連携など、グローバルの連携を国内でも提供していくほか、グローバルですでに提供されている機能の国内展開を状況を見ながら行っていくという。
曽根氏は競合に関する記者からの質問に「他のデジタルフォレットは競合とは考えていない。デジルフォレットの国内の浸透率はそれほど高くないため、マーケットに利便性を理解してもらうことが重要だ。ECサイトが新しい決済オプションを追加して、お客様に選択肢を追加すれば、その分ビジネスも成長する。そういう意味では、競合ではなくパートナーだと考えている」と述べた。
また、利用料率については、「料率での戦いは考えていない。セキュリティなどの付加価値で戦おうと思っている」と語った。