アスカネットは10月12日、何もない空中に映像を映し出すことができる「AIプレート」のメディア向け体験会を開催した。

近年「AI」といえば人工知能(Artificial intelligence)を指すことが多いが、ここでいうAIとは「Aerial Imaging」のことで、空中に映像を表示させる技術を指す。空中映像技術には、"ペッパーズ・ゴースト"として知られる板ガラスに映像を反射させる方式や、水蒸気に映像を投影する方式があるがいずれも反射物を必要とする。これに対し、アスカネットのAIプレートを用いると、反射物なしで空中に映像を写すことが可能となる。

空中映像は複数の方式があるが反射物が必要。また、反射物を用いない方式もあるが画質に難点がある

AIプレートは壁面を鏡にした短冊状のガラスを交差させてプレート化したもの。物体やディスプレイに対し45度の角度でAIプレートを設置すると、対象物側から入った光が直交する2つの鏡面で反射し、反対側の空中で再び結像する仕組みで、大きな仕掛けを用意しなくても、このプレート1枚で映像を空中に出現させることが可能だ。また、専用のメガネをかける3D映像とは異なり、映像は実像であるため見ている人が疲れにくいというメリットもある。

AIプレートの仕組み

用途としてはデジタルサイネージなどが有望視されるが、タッチパネルを代替する"空中タッチパネル"のニーズも見込まれている。この空中タッチパネルは、AIプレートによって映し出された映像の縁にフレーム型センサーを取り付けたもので、手袋をしたまま操作可能、"もの"に触れないため衛生的、必要に応じてON/OFFを切り替えられるなどの特徴から、医療現場や工業機械・食品加工現場でメリットを発揮すると考えられている。

想定される主な用途(左)とこれまでに行ってきた展示の例

普及に向けた課題としては、原理的に対象物とAIプレートまでの距離とAIプレートから表示範囲までの距離が1:1になるため小型化が難しいことが挙げられる。また、1m角で約200万円と価格も高い。自動車や家電業界から関心を寄せられているとのことで、量産技術の確立による低コスト化が望まれている。

体験会に設置されていたデモ展示。反射物がないため、写真では浮いているようには見えないが、実際に目にするとバッチリ浮いていた。右が"空中タッチパネル"で、縁にフレーム型センサーを設置。こちらも上手く撮影できていないが、一見パネルがあるようにみえる空間に指を入れても何も当たらない