東京工業大学(東工大)は10月8日、カルシウムアミドにルテニウムナノ粒子を固定した触媒が、300℃程度の低温度領域で従来よりも1桁高いアンモニア合成活性を示すことを発見したと発表した。
同成果は、東京工業大学 細野秀雄教授、原亨和教授、北野政明准教授、井上泰徳研究員、高エネルギー加速器研究機構 阿部仁准教授らの研究グループによるもので、10月7日付の米化学会学会誌「ACS Catalysis」に掲載された。
アンモニア合成の代表的な方法として、窒素と水素からアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法が知られているが、400~500℃の高温、100~300気圧の高圧条件が必要であるため、温和な条件下でのアンモニア合成技術が求められている。
アンモニア合成触媒として、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物を添加した鉄やルテニウムなどの触媒が用いられてきたが、300℃以下の低温度領域で効率よく働く触媒は見出されていない。同研究グループはこれまでに、12CaO・7Al2O3エレクトライド(C12A7:e-)にルテニウムを固定した触媒が、低温で高活性を示すことを発見していたが、同触媒の表面積は1m2/gと小さく、単位質量あたりの触媒性能が低いという課題があった。
今回、同研究グループは、窒素含有無機化合物であるカルシウムアミド上にルテニウムを固定した触媒(Ru/Ca(NH2)2)を用いることで、300℃程度の低温度領域で従来のルテニウム触媒の10倍以上の高い触媒活性を示すことを見出した。
Ca(NH2)2自体は熱的に安定ではなく、340℃で窒素と水素の混合ガス雰囲気下で加熱するとアンモニアを生成しながら分解してしまうので、触媒として持続してアンモニアを生成することはできないが、同化合物上にルテニウムを固定すると、長時間にわたって安定してアンモニアを生成し、触媒として機能する。
340℃大気圧下で長時間にわたるアンモニア合成の触媒活性を調べた結果、Ru/Ca(NH2)2触媒は、既存のルテニウム触媒Cs-Ru/MgO触媒に比べ、安定な触媒活性を示したあとで徐々に活性の低下がみられた。また、バリウム(Ba)を3%添加したCa(NH2)2にルテニウムを固定した触媒Ru/Ba-Ca(NH2)2では、700時間以上触媒活性が低下せず安定してアンモニアを生成できることも明らかになった。
同研究グループによると、今後、触媒の調製条件などを最適化することでさらなる活性向上が見込まれ、アンモニア合成プロセスの省エネルギー化に大きく貢献することが期待できるという。