東京大学(東大)とキュア・アップは9月29日、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)専用の治療アプリを用いた臨床研究を開始すると発表した。

肥満を背景に発症するNASHは国内に200万人程度、予備軍は推定1000万人程度存在すると考えられているが、現状では確立された治療法がなく、減量のための栄養指導や医師からの運動の励行など個々の施設の取り組みにとどまる。外来受診時の限られた時間で患者に適切な行動療法を行うことも現実的に困難である。

そこで、東京大学医学部附属病院 消化器内科 佐藤雅哉特任臨床医、建石良介特任講師、小池和彦教授、キュア・アップらの研究グループは、NASH治療を目的に、外来診療の時間以外も継続して患者に応じ、個別化した食事、運動、行動療法等のガイダンスを行うアプリを開発した。

今回開始となる臨床研究は、予備調査にあたるフィージビリティ研究として、まず東京大学医学部附属病院消化器内科外来の受診者のうち登録基準を満たす患者に対して行われる。なお登録は、同院の肝癌治療チームのホームページ内に設置された専用リンクから可能。

患者は、1日10分から15分程度、スマートフォンの治療アプリを利用して、個々の患者やアプリを経由して収集されるデータから個別に配信される動画やテキストによる医学的なガイダンスを受け、治療に取り組む。そして、外来診療時に、治療の効果を担当医師が評価するとともに、日々の治療の進捗、達成したプログラムなどについて治療アプリが収集した情報を外来診療に役立てていく。

同研究グループは今回の研究について、食事療法や運動療法や行動療法などの取り組みにおいて、自身の状態にあった医学的なガイダンスをリアルタイムに受けることで、NASHの病態と生命予後の改善が期待されると説明している。

脂肪肝の病態と治療戦略