LINEは7月14日(現地時間)にニューヨーク証券取引所、7月15日に東京証券取引所市場第一部にそれぞれ上場したが、これを受け同社は7月15日、上場に関する記者会見を東京のホテルで開催した。

この中で同社 代表取締役社長 出澤剛氏は、「LINEはコミュニケーションのインフラになりつつある。そのため、より経営の透明性を高め、それによって信頼性を勝ち得ることが重要だ。また、インターネット事業の環境は動きが早く、競争は世界レベルだ。このような中、成長し事業拡大のための資金を調達するために上場した」と述べ、上場の意義として「透明性、信頼性の向上」と「成長への投資」の2つを挙げだ。

LINE 代表取締役社長 出澤剛氏

集めた資金の主な使い道は、注力しているインドネシアユーザーの獲得施策、スマートポータルのパートナーシップのための投資、bot、AI、データ解析等の技術開発投資に利用するという。

また、ニューヨークにも上場した理由を同氏は、世界展開のため、LINEのプレゼンスを上げるためだと説明した。しかし、今後は日本、台湾、タイ、インドネシアのアジア4カ国に注力するという。理由はメッセンジャーアプリでトップシェアをとっているためだ。

「メッセンジャーは友達が多くいるアプリに集まるため、シェアが固まると強固なモデルになるのが特徴だ。また、シェアがあれば、メッセンジャーからさまざまなサービスに誘導できる」(出澤氏)

今後は日本、台湾、タイ、インドネシアのアジア4カ国に注力

現状、インドネシアはトップシェアではないが、出澤氏によれば、今後トップに十分立てるという。

「インドネシアのトップ企業はインドネシアのみの展開で、コンテンツにそれほど力を入れていない。そんな中LINEが伸びていることを考えると、トップシェアをとれるチャンスは十分ある」(出澤氏)

同社のこれら4カ国への戦略は、「カルチャライズ」だという。

「世界展開の戦略はローカライズを超えた徹底的な現地化だ。われわれはこれを『カルチャライズ』と呼んでいる、米国企業は世界統一で展開してシェアをとっていくという戦略だが、われわれがやっていることは、ユーザーのそばに寄り添って、ユーザーの声を聞いて最適化することだ。われわれは後発だが、これによってシェアをとってきた」(出澤氏)

「カルチャライズ」

ただ、すぐに4カ国以外に展開することは考えていないという。

「スマートフォンメッセジャーとしての世界の陣取り合戦は終わっている。この状況で他の国に展開しても成功確率は低い。われわれがやっている『スマートポータル』が次の大きな波になる。そして、海外の通信環境が整い、気軽に通信できるデータプランが出てきたタイミングで次の波がくる。それまでに4カ国でわれわれの『スマートポータル』を完成させる」(出澤氏)

同氏がいう「スマートポータル」とは、メッセンジャープラットフォーム上で、コンテンツプラットフォーム(ゲーム、音楽、マンガ、ニュースなど)とライフ・プラットフォームの2軸を展開することだ。

「スマートポータル」

「われわれは単純なメッセンジャーを超えて、ビジネスの入り口になるスマートポータルを目指している。イメージとしては、SNSというよりもPCが強かった時代のポータルサイトに近い。われわれには、多くのLINEユーザーがおり、それをコンテンツに誘導するのは自然な流れだ。ライフ・プラットフォームでは非常に重要なLINE Pay、LINE ポイントといったインフラをベースに、各領域のトップの方とアライアンスを組んで事業を展開していく。さらに今後はbotやAIの技術を使って、ユーザー体験や(提携)企業の効率を上げていく」(出澤氏)

コンテンツプラットフォーム

ライフ・プラットフォーム

また、マネタイゼーションモデルとしてはこれまでのスタンプ課金、ゲーム課金、メッセンジャー広告に加えて、6月から運用が開始されたパフォーマンス型広告「LINE Ads Platform」を新たな柱に位置づける。この広告モデルは、ユーザー属性・興味関心分野の推計情報などによってターゲティングできる。

4つのマネタイゼーションモデル

「LINE Ads Platformのようなプラットフォームが整えば、高い広告効果が期待できるので広告単価を上げることができる。一番期待できる広告だ。ここで重要なのがデータで、LINEは個人情報に触れないで、たくさんの情報を利用できる。世界のメッセンジャーサービスでマネタイズに成功している企業はほとんどなく、ここにわれわれのアドバンテージがあり、世界最先端だ」(出澤氏)

LINE Ads Platform

そして、最後に出澤氏は「本日上場することによって新たな株主を迎え、大きな期待も感じた。また、今日は新しい挑戦へのスタートの日だ。さらに世界を見据え、事業を展開していく」と意気込みを語った。