AIが欠かせない時代の競争力強化を目指す

ではなぜ、グーグルはそこまでAIの開発に力を入れているのだろうか。その理由は、やはり今後、AIがあらゆるITサービスを支える基盤となる可能性が出てきているからではないだろうか。

まだ特定分野での利用にとどまっているAIだが、ディープラーニングを主体としたAI技術の進化が急速に進んでいることから、将来的にはさまざまな分野のサービスにおいて、AIが活用されることが考えられる。Google Assistantなどの音声アシスタントや、Google Homeなどのスマートホーム分野はその代表例といえるが、他にもビジネスや健康・医療、娯楽に至るまで、さまざまな分野でAIの活用が進む可能性が、高まっているのだ。

特に今後、AIの活躍が期待されているものの1つが「チャットボット」である。チャットボットはメッセンジャーアプリ上で動作するプログラムのことで、チャットボットと会話するだけで、天気や交通情報などの必要な情報を得ることができたり、買い物やレストランの予約などができたりするようになる。メッセンジャーアプリ上で、会話するだけであらゆるサービスを利用できることから、チャットボットがWebやアプリを置き換える新たなプラットフォームになるとして注目が高まっており、最近ではマイクロソフトやLINE、フェイスブックなどが、チャットボットを開発しやすくするための仕組みを相次いで発表するなどして、この分野に力を入れている。

フェイスブックは開発者カンファレンス「F8」で、企業などがチャットボットを提供できる「Facebook Messenger Platform」のベータ版の提供を発表した

そして、このチャットボットの利用を拡大する上で、求められているのがAIだ。チャットボットを快適に利用するためには人間の話したことを理解し、膨大なデータの中から必要な情報を提示し、それを自然な会話で返すことで、会話を進める必要がある。そのためにはより優れたAI技術が求められることから、最近ではチャットボットに向けたAIの技術開発も加速しているようだ。

チャットボットをはじめとして、AIが多くのサービスに、日常的に取り入れられるようになった時、IT企業が競争力を高める上でもAIの技術は欠かすことができないものとなるだろう。それだけにグーグルは、Google I/Oで多くのAIに関連するプロジェクトを提示したことで、AIに注力する姿勢を明確に示したといえるのではないだろうか。

だがAIやそれに類する技術は、グーグルだけでなく多くのIT企業が注力している分野でもあり、今後競争が加速すると考えられる。実際、IBMのコグニティブ・コンピューティングシステム「Watson」は、既に企業などで導入が進められているし、アップルやアマゾン、マイクロソフト、そしてフェイスブックなど、多くの企業がAIの技術開発を進めている。IT企業が今後生き残るためには、AIが大きな鍵を握ることになる可能性は、極めて高いといえそうだ。