Google I/Oで、新たな音声アシスタント「Google Assistant」を発表するなど、人工知能(AI)を活用したサービスに力を入れる姿勢を明確にしたグーグル。世界トップクラスの棋士を破った囲碁プログラム「AlphaGo」を開発するなど、以前よりグーグルはAIに力を入れているが、それが同社のビジネスにどのようにつながっていくと考えられるだろうか。

AIを活用した「Google Assistant」が注目

今年も「Google I/O」で、さまざまな新技術を公開したグーグル。中でもその目玉として大きくアピールされていたのは「Google Assistant」である。

Google Assistantは、利用者が話しかけた内容に応じて適切な対応をしてくれる、音声認識機能を備えたアシスタントシステムである。グーグルはこれまで、「Google Now」で音声を認識して適切な内容をWebサイト検索する仕組みを提供してきたが、Google Assistantはさらに一歩踏み込んで、AIを活用して話しかけた内容を解釈し、相手が求める情報を、前後の文脈を考慮しながら適切な形で提供できるようになっている。

Google Assistantは前後の文脈を考慮できる対話型の音声アシスタント。映画監督を調べた後、その監督の賞や代表作などを、文脈から名前を理解して判断し、探してくれる

デモで紹介された事例を振り返ると、お勧め映画作品を教えてもらった後、その映画の評価をチェックしたり、上映時間を確認してチケットを取ってもらったりすることが、Google Assistantに話しかけるだけでできるようになる。単にキーワードに沿った情報を提示するだけでなく、グーグルのAIが会話の中から利用者が求めている要素を解釈し、文脈を理解した上で、それに沿った行動をとってくれるわけだ。

もっとも、音声アシスタント自体はグーグル以外も提供しており、代表的な事例としてはアップルがiPhoneなど、iOSデバイス向けに提供している「Siri」が挙げられる。Google Assistantはそのグーグル版といえるものだが、後発だけあって文脈を理解し、場面を選ばずさまざまな質問に対しより適切な答えを提示するなど、Siriより強化されている部分も多い。

さらに、Google I/Oでグーグルが打ち出したのが、「Google Home」と「Allo」という、Google Assistantを活用した2つのプロダクトである。Google Homeは、Google Assistantに話しかけて質問したり、声で家電を制御したりできる、スマートホームのハブとなるスピーカー型のデバイス。アマゾンが米国で提供している同種のプロダクト「Amazon Echo」に対抗する狙いが強いと見られている。

そしてAlloは、友達や家族などとの会話中にGoogle Assistantを呼び出し、Webやアプリに切り替えることなく情報を検索したり、飛行機や店の予約などができたりするメッセンジャーアプリ。Facebook MessengerやWhatsApp Messenger、日本で言えばLINEの対抗馬となるサービスだが、Google Assistantの利用に加え、投稿された写真に対する回答の候補を自動的に作成してくれる機能も用意されるなど、AIをフル活用しているのが大きなポイントだ。

メッセンジャーアプリの「Allo」は、会話中にGoogle Assistantを呼び出せるだけでなく、送った写真の内容から、返信の候補を自動的に作成してくれる機能などを備える