RISING2に求められるのは、RISINGで明らかになった蓄電池の性質や課題を、いかに産業に展開していくかということ。2016年度~2020年度までの5年間のプロジェクトであるRISING2では、2030年の実用化に向け、より高度な解析技術を開発していくとともに、エネルギー密度や耐久性、安全性などの車載用蓄電池に必要な性能を持つ容量5Ah級の蓄電池を試作し、検証を行っていく予定だ。引き続き、京都大学および産業技術総合研究所が拠点となり、蓄電池メーカーや自動車メーカーなど10企業16大学4研究機関が研究開発を進めていく。

RISING2に参画する企業・大学・研究機関の関係者

RISING2のプロジェクトリーダーを務める京都大学大学院工学研究科材料工学専攻 松原英一教授は「RISING2の特徴は、従来のように電極材料で電池を分けるのではなく、アニオン(OH-やF-など)移動型とカチオン(Li+)移動型に分けることで電池の反応を理解して、実用化に近づけていくところ」と説明している。

アニオン移動型の電池として、RISING2では、亜鉛空気電池とハロゲン化物を利用したナノ界面制御電池に着目。亜鉛空気電池は、エネルギー密度が大きく、また安全性が高いため、期待されてはいるものの、亜鉛極および空気極に課題があり、実用化には至っていない。そこでRISING2では、空気極の触媒開発や、亜鉛極の高容量化・超寿命化に注力していく。ナノ界面制御電池(ハロゲン化物)は、新しく開発されたもので未解明な部分が多いが、密閉型の電池としては最高レベルのエネルギー密度が期待できるため、さらなる研究を進めていく。また、アニオン移動型電池の共通の課題として、フッ化物の新しい物質や表面処理技術の開発にも取り組んでいくという。

一方、カチオン移動型の電池としては、硫化物電池とコンバージョン型のナノ界面制御電池について研究開発が進められる。硫化物電池においては、硫黄の溶出を抑制する技術の開発が進められる。カチオン移動型のナノ界面制御電池は、極めて劣化しやすいという課題があるため、電極の寿命改善が必要となる。また、いずれの電池も金属リチウム負極を使いこなすのが難しいという課題があるため、共通金属負極の開発も進めていく。

さらにRISING2では、蓄電池自体の開発だけでなく、これまでのビームライン解析の精度向上に加え、NMR、精密充放電、電子顕微鏡、計算科学などといった複数の解析技術を相補的に組み合わせることで、新規の解析技術の開発も行っていく。

左から、京都大学大学院工学研究科材料工学専攻 松原英一教授(RISING2プロジェクトリーダー)、NEDO 古川一夫理事長、京都大学 小久見善八名誉教授(RISINGプロジェクトリーダー)

古川理事長は、「蓄電池の分野では、それを搭載したEVやFCVだけでなく、蓄電池そのものが大きな産業になり得る。一時期、日本のポジショニングが危うくなっていた面はあるが、RISING・RISING2で競争力を取り戻して、日本の産業力強化につなげて行きたい」とコメントしている。しかし、いずれの研究開発項目においても、その目標達成に向けた難易度は極めて高い。NEDOは、蓄電池メーカー、自動車メーカーなどとの連携体制を取り、産学の知見を融合させることで、技術的なブレークスルーの創出を目指していきたい考えだ。