東北大学(東北大)は5月12日、花粉症などのアレルギー疾患の根本的な治療法として注目されている舌下免疫療法の仕組みを明らかにしたと発表した。

同成果は、日本学術振興会 特別研究員(PD) 田中志典氏と東北大学大学院 歯学研究科口腔分子制御学分野 菅原俊二教授らの研究グループによるもので、5月11日付けの英国科学誌「Mucosal Immunology」電子版に掲載された。

舌下免疫療法は、舌の下の粘膜からアレルギーの抗原を吸収させ症状の改善を図るアレルギー治療法だが、その詳しい仕組みはこれまでわかっていなかった。

同研究グループは、マウスの舌下に抗原を入れた際に、所属リンパ節である顎下リンパ節で、免疫を抑える働きをもつ制御性T細胞が誘導されることを発見。そこで、口腔粘膜において、抗原をT細胞に提示しT細胞を活性化させる役割をもつ抗原提示細胞に着目した。これを精査したところ、口腔粘膜の抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞およびランゲルハンス細胞に分類され、このうち樹状細胞がレチノイン酸とTGF-β依存性に、制御性T細胞を誘導する能力をもつことを見出した。

さらに、同研究グループは、舌下に入れた抗原の行方を追跡。すると、まず口腔粘膜のマクロファージが抗原を取り込み、次いで樹状細胞が抗原を顎下リンパ節に運搬し、そこで抗原提示を行い、制御性T細胞を誘導することが明らかになった。

舌下免疫療法はこれまで、花粉症などのアレルギー性鼻炎や喘息に有効であることが示されていたが、このように制御性T細胞が誘導されるのであれば、他のアレルギー疾患の抑制にも有効である可能性がある。同研究グループは、この点についても検討し、舌下免疫療法が、ツベルクリン反応、接触性皮膚炎、金属アレルギーなどといった遅延型アレルギーの抑制にも有効であることを明らかにした。さらに、舌下免疫療法を施したマウスの顎下リンパ節から制御性T細胞を取り出し、舌下免疫療法を行っていない別のマウスに移入したところ、そのマウスでも遅延型アレルギーの発症が抑制されたという。

以上により、アレルギーを抑制する機能をもっているのは、舌下免疫療法によって顎下リンパ節に誘導された制御性T細胞であることが明らかになったといえる。今回の研究について同研究グループは、舌下免疫療法の効果を増強するための重要な基礎研究であり、今後の応用が期待されるとしている。

舌下免疫療法の仕組み。舌下に投与された抗原は舌下粘膜に吸収され、主にマクロファージによって取り込まれ、樹状細胞によって顎下リンパ節へと運搬される。ここで樹状細胞は抗原提示を行い、TGF-βおよびレチノイン酸依存性に抗原特異的制御性T細胞を誘導する。この制御性T細胞は、舌下免疫療法に用いたものと同じ抗原によって引き起こされるアレルギーを全身性に抑制することができる