eセールスマネージャーで出力すべき営業データは大量に備えているソフトブレーンだが、eレセプションマネージャーの製品化までには、これまでとは違った苦労があったという。
「これまでは画面出力のみでやってきましたが、Pepperはコミュニケーションができます。会話のイントネーションや動きが必要なのですが、これを考えるのが大変でした」と小田氏。現在、Pepperのトークは7パターン用意されているが、そのイントネーションや仕草を決めるのに多くの苦労があったようだ。
会話については、いかにもビジネスの受付といった雰囲気の堅い話し方も考えられたが、それはPepperらしくないということで却下された。同じく、Pepperの基本動作を組み合わせた動きも面白くないからと採用しなかった。そのため、開発チームの会議はユニークなものになったという。
同氏はPepperの動き・喋り方の開発について「実際に自分達で動くしかないので、こういう動きはどうだろう、と腕を動かしていました。机があると邪魔ですから、広いところで立ってみんなで動くわけです。トークも1つずつ言い方を変更しました」と試行錯誤を重ねたことを回想した。その甲斐もあり、実際の受付に立つPepperは愛嬌のある動きを見せてくれている。
テスト段階で社内から受けたフィードバックもしっかり反映された。ソフトブレーンの受付にはPepperの後ろに従来型の内線通話機も置かれている。最初、Pepperを立たせただけでは受付機能があると気付かれず、内線通話機に向かう人が大半だったという。
「僕も受付できますよ、と呼びかける機能を備えることで15%から30%へと利用率を向上させることができました。社内で検証を重ねていく開発スタイルのおかげで、使ってもらえる製品に仕上がっています」と小田氏は胸を張る。
Pepperを通して顧客情報をより多く取得し、攻めの受付へ
多くの苦労がある中、なぜPepperだったのか。すでに他社製品でQRコードを利用した自動受付は存在し、得意の画面出力で対応力を向上させるという方法もある。それでもあえてPepperに取り組んだのは、話題性があるのと同時に現時点での対応力の高さと将来性を兼ね備えているからという理由があるようだ。
小田氏は「開発チームの名称がロボティクス推進チームであることからもわかるように、Pepperのみで考えているわけではありません。小型ロボットの活用なども考えてはいますが、B2Bで考えた時にはPepperが備えるタブレットの表現力は大きいです。われわれとしても画面出力があることでやりやすいのですが、利用する側としてもタブレットなしの音声のみでは実用性が低くなると考えています」と主張する。
話題性があり、タイムリーだということは重要だが、実際に役立つということも重視した開発だ。それだけに、今後の活用拡大に向けた予定も多く用意されている。
まずは現状のeレセプションマネージャーが持つ機能の強化として、Pepperのトークを50パターン程度まで増やす予定があるという。強い要望があれば導入企業ごとのカスタマイズにも対応するが、基本機能を充実させることでユーザーがメニューから選択するだけで自社に合った運用が行える状態を創出しようとしている。
また、その会話パターンも毎月リリースすることで、頻繁に訪問する人でも同じトークを何度も聞かされるということがないようにしたいと考えている。一方、Pepperから取得する情報を増やそうという考えもある。カメラを通して訪問人数を確認することや、お茶を事前に選ばせることで訪問者の好みを把握するようなことが最初の目標だ。
「画像を担当者への連絡時に添付することで、予定外に決裁権者が来ているから自社側でも対応する人を増やそうだとか、人数を把握して資料の部数を変更しようというようなことができると思います。また、飲み物を選んでもらえばミーティングに入る前のタイムロスを減らせますし、記録しておけばいつもの飲み物でいいですか、というようなコミュニケーションにもつなげることができます」と小田氏が語る内容は、決して遠い夢ではない。
eセールスマネージャーという営業支援ツールを応用する形で生まれたeレセプションマネージャーだからこそ、現在の機能から少し踏み込むだけで実現可能な機能は多い。
いずれはPepperを1人の営業マンにしたい!
大きな夢は、その先にある。トーク内容の多彩化と、カメラなどを利用してトークへの反応を認識し、eセールスマネージャーの持つデータと組み合わせることで可能にできると考えているのが、Pepperを1人の営業担当者として活躍させることだ。
「まずはeセールスマネージャーを使っているお客様なのかどうかを識別し、使っていない方ならeセールスマネージャー本体を、使っている方なら関連ソリューションを紹介する、というようなことがPepperにできると思います。同じようにお客様情報から今必要としているであろうものをPepperがおすすめして、その時の反応や、実際にパンフレットを手にとってくれたかどうかといった情報から本当に必要とされているものまで導くというようなやり方です。IBMのWatsonを搭載したPepperにも期待したいですね。そうやってPepperが営業の入口を切り拓いて、クロージングは人が担当するというようなことができればよいと考えています」と小田氏は語った。
そのほか、ソフトブレーンではサービスの多言語対応なども予定。すでにeレセプションマネージャーのアプリは日中韓英に対応しているが、Pepperのトーク内容はこれから対応を予定している。B2Bでの受付業務だけでなく、医療サービスや観光対応などB2Cでの活躍も期待できるeレセプションマネージャーだけに、海外展開も視野に入れた多言語対応は早い段階で取り組まれそうだ。
今後も精力的な成長が予定されているeレセプションマネージャーは法人向けPepperを活躍させてくれるソリューションとなりそうだ。