IoTは社会を大きく変えるか、カギは「オープン性」

再び坂村氏が壇上に戻り、オープンIoTとこのコンテストの関連性について述べた。同氏によれば、自身が1984年から取り組むプロジェクト「TRON」の目的が、今で言うところの「IoT」で、それを実現するには「API」(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)のオープン化が必須であるという。

「IoT」について語る坂村氏

例えば、ハードディスクレコーダーの機能がAPIとしてネットワーク経由で呼び出せれば、スマートフォンで出先から操作したり、クラウド側でデータを管理して高度な録画設定や再生を行ったりすることなどが可能にあると前置きし、APIが公開され、独自のUIを持たないソニーの「nasne」を紹介した。APIがクローズの場合、同じメーカーの機器同士としか連携できないが、ここ最近はAPIのオープン化が少しずつ浸透し、メーカーを超えたすべての機器間の連携が可能になってきたという。   また、これまでも同義語が多く現れてきた中で「IoT」という呼称が定着した理由として、坂村氏は「『モノがインターネットに繋がる』のではなく『インターネットのようにモノを繋ぐ』ことを明確にしている呼称だから」だとした上で、IoTが大きく社会を変えられるかどうかのカギは「オープン性」であると強調。オープンアーキテクチャやオープンソース、オープンソース・ハードウェア、そしてオープンAPI、オープンデータへと、さまざまなものがオープン化され、多くの人々の力で製品を発展させていくという考え方に世界中が移行してきたと説明した。

オープンAPIによってTHETAは、世界中の人々からのアイデアで可能性が広がっていく製品となる

坂村氏は、今回のコンテストで採用された「オープンAPI」により、全世界の人々からの新しいアイデアが集まり可能性が広がっていくと語る。THETAはまさにこうした考え方を先取りした製品であり、クラウドを介してコントロールするAIPをすべて公開し、これにより高度な機能を実現しようというのが今回のコンテストであると説明した。

今回のコンテストでは「1人ではできないような、チームによる大きなシステムの応募を期待している」とし、「日本人は仲間でない他人との連携を好まず、エコシステム作りも下手だが、これからは日本でもこのコンテストを開催するリコーのような先進的な考えの会社が増えることを期待している」と語るとともに、IoTがオープンでベストエフォート型の世界であることを、日本がもっと学ぶ必要があると断言した。最後に坂村氏は「今回のコンテストが、変わり始める日本を象徴するコンテストになることを願うとともに、どんなことが起こるか大いに期待しています」と述べ、説明会を締めくくった。

ガッチリと握手する大谷氏と坂村氏

なお、コンテストの審査基準は、IoT時代に相応しい革新性(独創性)、将来性や発展性、実用性、利便性などが総合的に判断されるという。審査員は坂村氏のほか、日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任 小沢淳氏、NAKED代表 村松亮太朗氏、ドワンゴ 技術コミュニケーション室 室長 清水俊博氏、リコー 会場執行役員 近藤史朗氏が務める。