京都大学iPS細胞研究所(京大CiRA)は2月9日、ヒトのiPS細胞から免疫細胞の一種であるiNKT細胞を作製することに成功したと発表した。

同成果は京大CiRAの喜多山秀一 研究員、同 金子新 准教授、愛知県がんセンター研究所のRong Zhang 研究員(当時、現・国立がん研究センター)、同 植村靖史 主任研究員(当時、現・国立がん研究センター)らの研究グループによるもので、2月9日(現地時間)に米国科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に公開された。

iKNT細胞は免疫反応を誘導し、がんへの免疫反応を高める上で重要な役割を果たしている。がん患者の多くでは体内のiNKT細胞の数や機能が低下していることが知られており、体内のiNKT細胞の数を増やすことで免疫機能を高め、がん治療につなげられると考えられている。

今回の研究では、iNKT細胞からiPS細胞を作製し、再びiNKT細胞(re-iNKT細胞)へ分化させることを目指した。その結果、元のiNKT細胞よりも元気で他の免疫細胞の機能を高めてがん細胞への攻撃を促すre-iNKT細胞を作製することに成功。さらに、re-iNKT細胞自身もがん細胞を直接攻撃することが観察された。 これにより、iPS細胞への初期化を介して機能が改善した大量のre-iNKT細胞を作製できることが示されたほか、iNKT細胞はがんだけではなく感染症や自己免疫疾患など幅広い疾患に関連する免疫応答を制御していると考えられており、今後細胞治療への応用が期待される。

iNKT細胞から作製したiPS細胞 (スケールバー:100 µm)

iPS細胞から作製したre-iNKT細胞