世界のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに倍にすると世界の国内総生産(GDP)は増える―。米国、日本、欧州連合(EU)など世界の160カ国以上が加盟する国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が、再生可能エネルギー導入によるプラスの経済効果をまとめる報告書をこのほど公表した。
再生可能エネルギーは、太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力などのエネルギーの総称。報告書は約90ページ。IRENAの分析チームは各国や国際機関などから経済統計、経済指数など膨大な関連資料を集め、詳しく分析した。
その結果、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を30年までに10年比2倍の36%にすると、世界全体のGDPは最大1.1%、金額にして約1兆3,000億ドル増える、との分析数字が示された。この額は、スイス、南アフリカ、チリの3カ国のGDPの合計に匹敵する。
このほか、再生可能エネルギー分野への投資効果は、さまざまな分野で経済効果をもたらし、再生可能エネルギー分野の雇用は現在の920万人から2,440万人に大幅に増加する、という。報告書はまた、日本のように石油、石炭などの化石燃料を多く輸入している国は、エネルギー資源輸入総額が減ることにより経済効果も大きくなる、としている。
経済効果が最大になったシナリオでの試算結果でGDPの伸びが最も大きかった国はウクライナで3.7%増、次いで日本の3.6%増、3位はインドで2.4%増。以下南アフリカ2.2%、米国1.8%、オーストラリア1.7%それぞれ増。経済効果が一番少なく出たシナリオでも日本は2.3%増(世界全体で0.6%増)で増加率は世界1位だった。一方、サウジアラビアやロシア、ベネズエラなど石油産油国を中心にGDPは減少する分析結果になった。
昨年12月に採択された「パリ協定」では、世界各国に今世紀後半の「ゼロ炭素化」を求めている。報告書の中でIRENAのアミン事務局長は「パリ協定は、各国に交渉から脱炭素化に向けた速やかな行動を求めた。今回の分析は、エネルギー構造の転換が気候変動だけでなく経済効果にも寄与することを明確に示した証拠になる」と強調 している。
IRENAは、再生可能エネルギーを世界的に普及させ、各国に導入を促進するために2009年に設立が決まり、11年4月に正式に発足した国際機関。主な活動は、再生可能エネルギー利用の分析、検証や政策上の助言のほか、加盟国の技術開発支援などを目的にしている。外務省によると、15年1月現在、米国、日本など140カ国と欧州連合(EU、加盟28カ国)が加盟している。日本は設立当初から理事国(計21カ国)で分担金分担率は米国に次いで2位(約13%)。
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