富士ソフトは1月8日、グループ会社であるOA研究所とエピフォトニクスが慶應義塾大学を共同研究者として提案した「データセンター・放送局向け超高速光レイヤ1スイッチの開発」が新エネルギー・産技術総合開発機構(NEDO)の平成27年度「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に採択され、研究開発を開始したと発表した。

近年、スマートフォンを代表とする移動体通信端末やクラウドコンピューティングの急速な普及によって、インターネットのデータ通信容量の加速度的な拡大とデータセンターサービスの巨大化によるネットワーク電力消費量の爆発的増大が問題となっている。このような背景の中、データセンターネットワークにおいて、高い信頼性を担保しつつ省エネルギーを実現する技術革新が求められているという。

「データセンター・放送局向け超高速光レイヤ1スイッチの開発」のシステムイメージ

この課題に対して両社は、トップ・オブ・ラック(ToR、データセンターのラック内でサーバやストレージを束ねる専用の集約型スイッチはラック内の最上位に配置されることから「トップ・オブ・ラック」と称されている) 間のインタコネクトにおいてダイナミックに発生する巨大フロー(エレファントフロー)を検出してバイパスする、新しいコンセプトの超高速、低消費電力対応の光レイヤ1スイッチ、および光回線網における最適な「SDN(Software Defined Network:ソフトウェア定義型ネットワーク)フロー制御アプリケーション」の研究開発を行うこととなった。

現在、データセンター内のToR間ネットワークでは、主に消費電力の大きい電子スイッチや切替え速度が低く光回線が十分に活用できないMEMS光スイッチが使用されている。エピフォトニクスが開発するPLZT(鉛、ランタン、ジルコニウム、チタンの酸化化合物)光スイッチは、待機電力が低く、かつMEMS光スイッチと比較し、1000倍以上となるナノ秒オーダーの高速切替え機能を有している。

今回の研究開発では、PLZT光スイッチをレイヤ1スイッチとして活用することによって、待機時を含む消費電力の軽減と高速切替え機能を最大限に活用した光伝送路の効率的な利用とスイッチ機器設置数の削減、さらにはSDNフロー制御アプリケーションの開発によりToR間トラフィックを低減し、データセンターネットワークの消費電力の削減を目指す。

開発する光レイヤ1スイッチは、データセンターネットワーク向けのほか、テレコムキャリア市場における測定器切替えや高速回線切替え、ならびに放送・ブロードバンド市場における8K多重伝送装置、疑似無瞬断光スイッチング装置など超高速のネットワーク切替えが要求されている市場への導入が期待されている。OA研究所とエピフォトニクスは、この公共性の高い研究開発を通じ、ネットワークにおける省エネルギー化と利便性と安全性の向上によって社会の発展に寄与していく考えだ。