SOLIDWORKSブランドのCEOであるジャン・パオロ・バッシ氏

ソリッドワークス・ジャパンは11月10日、年次イベント「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2015」を都内で開催した。同イベントにはSOLIDWORKSブランドのCEOであるジャン・パオロ・バッシ氏も参加し、記者向けの説明会でSOLIDWORKSブランドが見据えるビジョンについて語った。

SOLIDWORKSはもはや製品の枠を超えている

同氏によれば、SOLIDWORKSはCADの枠組みを超えてエコシステムと呼ぶべき有機体へと成長しつつあるという。その裏付けとしてバッシ氏はいくつかの具体的な数字を提示する。

「現在、ライセンス数は300万に達しており、(1ライセンスを複数のユーザーで使うことを考えると)グローバルで4~500万人が毎日SOLIDWORKSを使っていると考えられる。また、22万の商用アカウントがあり、市場で36%のシェアを有している。これは、周りを見渡せば視線の先にはSOLIDWORKSを使って設計された製品が溢れているということを意味している。また、3D ContentCentral(メーカーがアップロードした3Dモデルをダウンロードできるウェブサイト)には130万のメンバーがいて、当社の競合他社も使用している。さらに、2万9000を超える教育機関がSOLIDWORKSを使用し、16万5000人の認定ユーザーがいる。つまり、学生がSOLIDWORKSの認定を受けて、即戦力の人材として社会に出て行っている。SOLIDWORKSはエコシステムであり、さまざまなところに存在している。」(同氏)。

SOLIDWORKSはエコシステムと呼べるほど拡大しているという。なお、スライドでは教育機関を2万8000校としているが、現在ではさらに増えて約2万9000校とのこと。

SOLIDWORKSをイノベーションプラットフォームに

このような大きなユーザーコミュニティを抱えているSOLIDWORKSがミッションとして掲げているのが「卓越したデザインを実現すること」だ。このミッションを遂行するためにバッシ氏は、SOLIDWORKSをプラットフォームとして機能させる方針を打ち出しており、「プラットフォームを構成する要素は色々あるが、最も重要な要素はデータを知識や知見に変換できるような環境を整えることだ。」と語る。さらに、「プラットフォームではアイデアが共有あるいは批判され、議論の対象となる。そしてアイデアの選択ということが発生する。イノベーションは複数のアイデアが絡み合って生まれるもので、プラットフォームは複数のアイデアの中からその時に使いたいアイデアを選び出すプロセスに役立つものでなければならない」とし、コラボレーションを醸成しイノベーションをおこす場としてプラットフォームが必要であり、SOLIDWORKSがその役割を担うと力説する。

一方でバッシ氏は、SOLIDWORKSがプラットフォームとして機能するためには、来年初頭にSOLIDWORKS 2016向けにリリースすることが発表されたハイエンドのレンダリングツール「SOLIDWORKS Visualize」や、今年の2月に発表したコンセプト設計ツール「SOLIDWORKS Industrial Designer」などの新しい製品やサービスを継続的に提供していく必要があるとする。さらに同氏は「イノベーションのプラットフォームとなるにはラディカルな技術が必要となる」とし、解析技術を利用して最小限の材料で形状を定義するオプティマイゼーション(最適化)技術や、設計時に似たようなデザインや、外注先をみつけられるプレディクティブ(予測)コンピューティングなどの技術にも取り組んでいくとした。なお、前者の実装はまだ未定だが、後者に関しては一部ですでに実用化している。

「SOLIDWORKS Visualize」を用いたCG

「SOLIDWORKS Industrial Designer」の画面

オンラインサービス「MySolidWorks」日本語版は2016年第1四半期のリリース

では、「卓越したデザインを実現する」ことができる環境では、何が得られるだろうか。バッシ氏は「我々はユーザーとの距離を短くしたいと考えている。『MySolidWorks(2016年第1四半期の国内展開が発表されたオンラインサービス)』などのオンラインソリューションを利用することで、ユーザーとダイレクトに交流することができ、フィードバックをダイレクトに受け取ることができると考えている。また、ユーザーとユーザーのお客様の距離も縮めたいと考えている」とする。

同氏の「距離を縮める」という表現を言い換えると、メーカー(またはベンダー)と顧客の関係性を深化させるということになる。SOLIDWORKSのユーザーからのフィードバックが増えればそれだけ製品開発のスピードが早くなるし、同じようにSOLIDWORKSユーザーがARなどのデジタル技術を使って顧客のフィードバックを開発の早い段階から得られるようになれば同じようなメリットを享受することができる。

エンジニアリングの世界はまるで「不思議の国のアリス」のよう

同氏はSOLIDWORKSユーザーをはじめとするエンジニアリング業界が置かれている状況についてまるで「不思議の国のアリス」のようだとする。「ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』でアリスは『同じ所に留まるためには必死に走らなければならない。どこか他所に行くにはその倍の速さで走らなければならない』と言われてしまう。まさに、そのような世界に私達のユーザーは住んでいて、そこで私達のイノベーションプラットフォームが役に立ち、ユーザー側でもイノベーションが起きていくということになるだろう」(同氏)。

エンジニアリングの世界は「不思議の国のアリス」のよう?