早稲田大学文学学術院は、変体仮名の読解能力をゲーム感覚で身につけられるスマートフォンアプリ「変体仮名あぷり」Android版をリリースした。iOS版は近日中にリリース予定。

共同開発者のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)によって英語版「The Hentaigana App」もリリース予定。いずれも無料アプリだ。本稿では、リリースに際して行われた、記者発表会の様子をお届けする。

「変体仮名あぷり」。現在はGoogle Play上にてAndroid版が配布されている(iOS版は近日公開予定)

「変体仮名あぷり」は、明治時代以前の文献に用いられる字体統一前の平仮名「変体仮名」を、スマートフォン上で学習できるというもの。基本の学習機能は単語帳のような形式で、変体仮名と字母・読み方をタッチ操作で切り替え、一文字ずつ学んでいく。

アプリ画面に現れた変体仮名を理解度に応じて左右にスワイプすることで正答率をカウントし、文字ごとの理解度を把握する表も搭載。苦手な文字を指定して集中的に練習する機能や、指で動かせる変体仮名辞典も付属する。

「変体仮名あぷり」の学習モード。1画面に表示する文字数は増減可能。

開発は、UCLA アジア言語文化学部所属の日本文学研究者で、早稲田大学訪問准教授でもあるマイケル・エメリック准教授と、早稲田大学文学学術院 十重田裕一教授、陣野英則教授ら日本古典文学研究者が中心となって実施した。ちなみに、このアプリの開発は、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長・柳井正氏の寄付を受けて早稲田大学とUCLAが取り組んでいる「柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト」の一環として行われている。

このアプリの開発経緯について、エメリック准教授は、自身が修士課程で「十帖源氏」を学んだ際、読解のために変体仮名の単語カードを自作して猛勉強したエピソードを語った。自身が教える立場になり、同じ苦労を学生にさせたくはないこと、そして今や日本人の多くも読むことは難しい変体の面白さを、より多くの人々に知ってほしいという意図を語った。多くの人が触れるアプリというコンセプトから、背景デザインの美しさやシンプルなインタフェースなどに気を配ったという。

十重田裕一 文学学術院教授(Yanai Initiative 運営委員)

マイケル・エメリック准教授

同アプリの素材には、同大学が所蔵する室町時代~近世までの貴重な写本の中から、変体仮名のサンプルを1文字ずつ選び、抽出したものを用いた。これらの仮名に対して、「字母」(変体仮名の元となる漢字)を同大学職員で書家の渡部大語氏が付し、変体仮名と元の漢字および読みを学習可能とした。

仮名ごとに学習状況が円グラフとなって表示されるため、学習者自身の得意な、あるいは苦手な文字が分かりやすくなっている

仮名や字母から逆引きで調べられる「変体仮名辞典」

なお、同アプリの開発を手がけたプログラマーのファーゴ・マット氏によれば、同アプリは変体仮名・字母などの文字情報をクラウド上から読み込んで表示しているため、今後のアップデートによって、異なる時代の変体仮名なども学習可能な拡張性を持っているという。

メニュー画面。拡張機能もあらかじめリリース時にメニュー内に含まれていた

同アプリに用いられた文献の出典解説

ちなみに、リリース後に行われることが決定しているアップデートとして、実際の文献で見られるような、続けて書かれた変体仮名の読み方を学習できる「続き書きモード」を実装するということだ。