2015年6月末にベルギーの首都Brusselsで開催された, 同国の独立系半導体・エレクトロニクス研究機関imecの年次事業計画紹介イベント「imec Technology Forum 2015」で露光装置大手であるASMLの社長兼CEOのPeter Wennink氏(図1)が招待講演し、EUVリソグラフィ装置(極端紫外線露光装置、図2)の開発状況と今後の計画について述べた。

図1 ASML社長兼CEOのPeter Wennink氏

図2 imecで稼働中のASMLの300mmウェハ露光用EUVリソグラフィ装置。装置の高さが人の丈の2倍もあり、これで半導体クリーンルームの天井の高さが決まる (画像はimec提供)

Wennink社長は、「手ごろなコストで微細化できるかどうか(Affordable Scaling)が、今後の半導体産業の発展の鍵をにぎっている。そのためには、技術ノード7nm世代からEUVリソグラフィを生産導入できるようにし、液浸ArFリソグラフィとうまく組み合わせて(mix and match)使えるようにしなければならない。私は技術ではなく財務出身だから、コストのことは他の誰よりもわかっているつもりだ」と前置きして、2015年6月現在のEUVリソグラフィ装置の状況について以下のように説明した。

生産性(2015年の目標は1日で300mmウェハを1000枚露光処理)

  • ある有力顧客サイトでは、80W光源を用いて、24時間に1022枚処理に成功している。
  • 複数の顧客サイトで、光源を40Wから80Wへの交換を完了した。ほかの顧客は今後順次交換していく。
  • ASML本社内(オランダ)では最高110Wまでの光源をEUV装置に装着し評価中である。

装置稼働率(2015年の目標は70%)

  • 最新型のEUV露光装置「NXE:3300B」の稼働率(故障やメンテナンスで停止している時間を除いた実質の稼働時間の比率)は、複数の顧客で平均55%である。
  • ある顧客(1社のみ)では、82%(1週間)というチャンピオンデータも出ている。
  • 光源の稼働率を2015年末までに86%へ引き上げを目指す改善プログラムが進行中。

次世代機種「NXE:3350B」の出荷計画(2015年の目標:6台)

  • 複数の装置をASML社内で組み上げ中である。
  • すでに半導体生産用に2台の注文を受けている。
  • 最低でも15台の大量納入をある顧客と合意している。その内2台は年内に出荷する。

(著者註:ASMLは顧客名を明かしていないが、ある顧客とはIntelではないかと多くの業界関係者はみている。光源出力などの肝心の仕様が未定であるため、購入を確約したものではなく、条件付きの購入(要求仕様が実現次第)か生産枠をおさえるための約束ではないかと業界筋は見ている。Intelはおそらく7nmプロセスのMPU生産からEUV露光を導入するのではないかと推測される)