美術館でのアート鑑賞は、慌ただしい日常から離れ、インスピレーションを受けたり、リフレッシュをするのにはぴったりの過ごし方。ですが、ゆったりしたイメージとは裏腹によく歩き回ることになるので、見終わった頃には少し疲れてしまったという覚えがあるのでは?

そんなとき、頼りになるのが美術館併設・あるいは近隣のカフェ。建物に歴史があったり、そこならではのメニューがあったりと、疲れを癒やすのみならず、見所も多いものです。今回は、東京都・北品川にある原美術館「カフェ ダール」を紹介します。

原美術館はコレクションや企画展の充実もさることながら、中庭の落ち着いた雰囲気も印象的

歴史ある洋館で「アートを食べる」

原美術館は、1979年に開館した、国内外の現代美術を専門に取り扱う美術館。企画展の内容も毎回注目されますが、それだけでなく、都会の真ん中にありながら落ち着いた雰囲気の庭園がある美術館としても知られています。

同館の建物は著名建築家・渡辺仁が手がけたもの。旧日劇や上野の東京国立博物館本館とならんで、同氏の代表的な作品のひとつとなっています。20世紀初頭のヨーロッパの建築様式を取り入れた個性的な洋館で、昭和初期の建築史を探る上からも貴重な存在と言われているそう。2008年6月には照明デザイナー・豊久将三による新照明システム導入をはじめとする全館リニューアルが行われました。

「カフェ ダール」店内からは、館内にある中庭を一望できる

そんな原美術館併設の「カフェ ダール」は、原美術館の中庭に面したお店です(※利用には入館料が必要)。食事もお茶も可能なメニュー構成ですが、中でも注目したいのが、企画展ごとに新作が登場する「イメージケーキ」。開催中の企画展にあわせたケーキを、同店のシェフが考案しています。

現在は、20世紀を代表する絵画と彫刻の巨匠の個展「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」にあわせ、展示されている絵画をモチーフにしたケーキを提供中。「Proteus」という作品を、四角い桃のムースをベースに、クランベリーとミントのジュレを添えて表現しています。

「Proteus(プロテウス)」1984年 (c)Cy Twombly Foundation/Courtesy Cy Twombly Foundation

「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」イメージケーキ

ケーキを考案したシェフの石原道子さんは、「初夏に向けて、白桃のコンポートとムースで果実味あふれる、さっぱりとしたケーキに仕立てました。ムースは甘さ控えめながら、コクがあり飽きのこない美味しさです。上に添えたクランベリーとミントのジュレのそれぞれさわやかな酸味と清涼感もポイントです」とコメント。この季節から旬を迎える白桃の香りとジュレの夏らしい舌触りが、夏を感じさせてくれる一品です。舌のうえで味わうアート、一度試してみては?