国立がん研究センターは5月7日、多目的コホート(JPHC)研究から、緑茶摂取と全死亡リスクおよびがん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患および外因死を含む5大死因死亡リスクとの関連を検討した結果、緑茶を習慣的に摂取する群において、男女の全死亡リスクおよび心疾患、男性の脳血管疾患および呼吸器疾患による死亡リスクの減少が示されたと発表した。
同成果は、40~69歳の男女約9万人を対象に行った多目的コホートの成果の1つで、1990年または1993年の研究開始から2011年まで追跡した調査結果をもとに、緑茶の習慣的摂取と全死亡・主要死因死亡リスクとの関連を検討したものとなっている。詳細は疫学会誌「Annals of Epidemiology」に掲載された。
その結果、研究開始時に緑茶を飲む頻度に関する質問への回答から、1日1杯未満、毎日1~2杯、毎日3~4杯、毎日5杯以上飲むという4つの群に分けて、その後の全死亡およびがん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、外因による死亡との関連を分析したところ、緑茶を1日1杯未満飲む群を基準として比較した場合、1日1~2杯、1日3~4杯、1日5杯以上の群の危険度(95%信頼区間)は、それぞれ男性の全死亡で0.96(0.89-1.03)、0.88(0.82-0.95)、0.87(0.81-0.94)、女性の全死亡で0.90(0.81-1.00)、0.87(0.79-0.96)、0.83(0.75-0.91)となっていることが確認されたという。
また死因別では、がん死亡の危険度には有意な関連がみられなかったものの、心疾患脂肪、脳血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡については、緑茶摂取による危険度の有意な低下がみられ、中でも男性では脳血管疾患と呼吸器疾患、女性では心疾患と外因死において、緑茶摂取量が増えるにつれ死亡リスクが低下する傾向がみられたとする。
これは、研究開始から5年以内の死亡例を除いた場合も同様の関連がみられ、統計学的に有意に低くなっていることが示されたとする。
一方、同研究ではコーヒーの摂取との関係性も調査しており、コーヒーをほとんど飲まない群を基準として比較した場合、1日1杯未満、1日1~2杯、1日3~4杯、1日5杯以上の群の危険度(95%信頼区間)は、それぞれ全死亡で0.91(0.86 ~0.95)、0.85(0.81~0.90)、0.76(0.70~0.83)、0.85(0.75~0.98)となっており、飲む量が増えるほど危険度が下がる傾向が、統計学的有意に認められたとする。
死因別では、がん死亡の危険度には有意な関連がみられなかったものの、心疾患脂肪、脳血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡については、コーヒー摂取による危険度の有意な低下がみられたとしている。
なお、研究グループでは、緑茶やコーヒーの摂取による死亡リスク低減について、緑茶に含まれるカテキンやコーヒーに含まれるクロロゲン酸の効能のほか、カフェインによる血管内皮の修復や気管支拡張作用などが作用している可能性があるとしている。ただし、今回、用いられた質問票では、缶およびペットボトル入り緑茶を含む緑茶全般の摂取頻度、ならびに缶コーヒー、インスタントコーヒー、レギュラーコーヒーを含むコーヒーの摂取頻度を尋ねており、淹れ方やカフェイン/ノンカフェインの有無などで分けていないことに留意してもらいたいとコメントしている。