アドビは、同社の提供するクリエイター向けSNSに登録している約500万人のクリエイターの作品を対象として、全世界の業界トレンド調査"Adobe Digital Index「New Creatives Mashup」"を実施。その調査結果を発表した。
このたび公開された調査結果は、アドビが提供するクリエイター向けソーシャルネットワークサービス「Behance」に登録している約500万人のクリエイターの作品を対象にデータ収集を行い、分析結果をまとめたもの。この調査結果によると、「新世代のクリエイター」である18~22歳のクリエイターの間では、クリエイティブワークのモバイル化が進む一方で、アナログ的な着想によるデザインワークも注目されているという結果となった。
クリエイティブワークのモバイル化
新技術や最先端のプラットフォームの導入によりクリエイターたちは作業スペースを拡大し、「セカンドスクリーン」としてのモバイル端末が、若手クリエイターたちのワークフローにこれまで以上に密接に取り込まれるようになった。特に、Behanceで作品を投稿している100万人近い18~22歳のクリエイターの間では、モバイル利用が顕著に進んでいる。過去1年間でモバイルでのログインが36%増加しており、若年層のクリエイターは全体と比較してモバイルでのデザインワークに従事している割合も2倍以上高くなっている。また、この年代がモバイルで行っている新規プロジェクトは、ブランディングのほかタイポグラフィー、漫画などが挙げられる。今後、モバイルプラットフォームからのデザインワークへの従事・制作が増え続けることが予想されるということだ。
場所を問わないクリエイティブな着想
世界的にクリエイティブワークはかつてないほど増加傾向にあるが、アイデア創出やプロジェクトが行われている中心地域は、ブルックリン、ハンブルク、ロンドン、サンフランシスコといった主要都市ではなくなったことが明らかとなった。現在、クリエイターが集中しているのは、ブラジル、中国、英国、インド、メキシコ、ロシア、カナダとなっている。さらに、特定の年齢層でクリエイターが増えつつある国は、ドイツ、フランス、インドネシア、エジプトが挙げられる。
触覚ベースのクリエーションへのシフト
Adobe Digital Indexによると、デザインワークにアナログ要素や非加工要素が復活してくる傾向を示している。Behance上の新世代クリエイターたち(18~22歳)は、前世代のクリエイターたちによく見られたデザインテーマやデザイン要素(「デジタル」、「アプリ」、「ブランディング」、「ウェブ」、「ロゴ」など)と、デザインの物理的な要素や触感のある要素から得られるインスピレーションの両方をうまく活用している。また、新世代のクリエイターは線描とタイポグラフィーで他の世代を圧倒しており、「ポートレート」や「スケッチ」をより多く制作している。注目すべきは、上の年代に比べて「インク」や「鉛筆」をより多く使用している点である。しかし、デザイン制作におけるベーシックな要素への探究心は、若年層に限定されているわけではなく、年代ごとに最も重視しているプロジェクトのトップ3を調査したところ、すべての年代でハンドレタリングがランクインしたということだ。このように、アナログ的な着想によるデザインワークが突如として注目され、若年層クリエイターたちの間でフリーハンドデザインなどの分野への関心が急速に高まっていることから、ネットワーク化時代において、このような意識が広まり、触覚ベースのクリエーションへのシフトが今後続くことが予想できると分析している。