前編では、コンテンツマーケティングとその目的、そして、コンテンツマーケティング戦略を推進するうえでキモとなるペルソナについて説明した。後編となる今回は、コンテンツマーケティングをポイントソリューションとして扱うのではなく、コンテンツを利用し、マーケティング・プロセスやセールスプロセスと連動させたプラットフォームを構築する際の要件について考えてみたい。

マーケティング・プロセスにおけるコンテンツに求められるモノ

インバウンド・マーケティングのプロセスは、知らない人から目的を持った訪問者、見込み顧客、顧客、熱心なファンへと転換する工程を示している。これを踏まえると、コンテンツマーケティングは、コンテンツを活用した「ブランドの認知」「見込み顧客への転換と育成」「顧客への転換」といったマーケティング・プロセスやセールス・プロセスと連動したプロセスと見ることもできる。

例えば、最新テクノロジーの情報収集をする際、ホワイトペーパーをダウンロードした経験のあるIT担当者は多いだろう。ダウンロードを行う時、勤務先をはじめとする個人情報を入力したはずだ。その時点ではテクノロジー製品を購入する予定はないものの、ホワイトペーパーに書かれている情報の必要性を判断したからダウンロードしたのではないだろうか。ITベンダーはその担当者の承認(パーミション)を得て個人情報を入手しており、ITベンダーにとって、訪問者が見込み顧客に変わるのはこの時である。

また、インバウンド・マーケティングのプロセスの最初のフェーズは、ユーザーを引き付けることである。コンテンツマーケティングも基本的にこの考え方を踏襲しており、ブランドを見つけてもらうことを重視している。だから、コンテンツは見つけてもらえるような優れた品質を備えていなければならない。

そして、忘れてはならないのは、コンテンツマーケティングでは良いコンテンツを作ることが目的ではなく、ビジネスに貢献するコンテンツの制作が目的という点である。良い製品・サービスを作れば売れるわけではないのと同じように、良いWebサイトを作れば誰かの目にとまるわけではない。訪問者、見込み顧客、顧客が必要な情報を適切な時期に、適切な方法で提供することが求められる。

コンテンツのセグメンテーションこそがパーソナライゼーション

デジタルマーケティングにおいて、人はあたかも自分だけが特別扱いをされているような待遇を期待する。パーソナライゼーションは、コンテンツマーケティングにおいて非常に重要な要素である。コンテンツマーケティングを行い、個々のオーディエンスに最適化したコンテンツを提供しようとすると、今まで提供していたコンテンツよりも多くのコンテンツが必要となることは容易に想像できるだろう。また、場合によってはコンテンツの種類を増やすことも必要になる。そうなると、コンテンツマーケティングに向けて個別にコンテンツを提供することは非常に大きな負担になると心配する企業も多いのではないか。

しかし、パーソナライゼーションの意味するところは、一人ひとりに対して異なるコンテンツを提供することではない。前編で説明したペルソナに応じてコンテンツのセグメンテーションを行うことが、コンテンツマーケティングにおけるパーソナライゼーションなのである。

マーケティングにおけるセグメンテーションとは、効率的にターゲットにアプローチするためのものであり、市場を特定の属性ごとのグループに分類するものである。ペルソナは同じ属性を持つグループのモデルであるのと同時に、同じニーズを持つグループともとらえることができる。

したがって、下図のように、ペルソナとカスタマージャーニーのフェーズごとに提供するコンテンツの一覧表を作ってみれば、リード育成や顧客獲得のために必要なコンテンツが何かを明確にすることが可能になる。

コンテンツセグメンテーショングリッドのサンプル 出典:"Epic Content Marketing", Joe Pulizzi

コンテンツマーケティングを行ううえでビジネスに貢献するWeb戦略が重要

コンテンツが会話の内容だとすると、コンテキスト(適切なタイミングと場所)にも配慮が必要である。企業は、ブランドのターゲットとなるオーディエンスが求めているコンテンツを、ペルソナごとに適切なタイミング、適切なチャネルを選んで提供することが求められる。

例えば、何か問題を抱えている人がいるとする。その問題を解決するのに必要な製品が何かを調べている段階、購入したい製品の候補を絞り込んでいる段階、どの製品を購入するかが決まっている段階、各段階でペルソナの必要とする情報は異なる。

さらに、情報提供の形式にもペルソナごとに好みが異なる。ある人はWeb記事を好むが、また別の人はセミナーの受講を好むといった具合だ。企業は、オーディエンスがアクセスする可能性のあるチャネルから多様なコンテンツを提供できるような体制を整備することが求められる。

このように、これからデジタルマーケティングに取り組む企業にとって、コンテンツマーケティングは重要な考え方である。そして、Webサイトはコンテンツを提供するうえで重要な役割を果たすチャネルとなる。Webサイトの再構築を複数回経験した企業は多いだろうが、コンテンツマーケティングに取り組むと、半永久的なWebサイト改修に取り組むことにもなるだろう。

なぜならば、同じ情報ニーズを持つペルソナごとに適切なコンテンツを提供するよう、絶え間ないアップデートが求められるからである。よって、Webサイトの管理に従事してきたIT部門は、コンテンツマーケティングがマーケティング・プロセスにコンテンツを組み込んだものであることを理解し、ビジネスに貢献するWeb戦略を策定し、展開していくことが求められるのだ。