情報通信研究機構(NICT)は1月30日、Wi-SUNアライアンスが策定するHAN(Home Area Network)用Wi-SUNプロファイルの無線機の実装に成功したと発表した。

家庭内で、各家電における消費電力の監視や監視結果に基づく利用形態の制御により、エネルギーの消費を削減し、環境に優しい社会形成に寄与するHEMSの概念が注目されている。HEMSは、HEMSコントローラ、スマートメータ、家電などにより構成され、各機器間の上位層通信プロトコルとしてECHONET Liteが策定されている。Wi-SUNアライアンスでも、ECHONET Liteをサポートしているが、同規格で規定されていない下位層通信プロトコルには、IEEE 802.15.4g国際標準規格準拠の920MHz帯無線を用いるWi-SUNプロファイルの策定を進めてきた。これまでに、Bルートと呼ばれる"HEMSコントローラとスマートメータ間の区間"については、Wi-SUNプロファイルが策定され、すでに複数の電力会社により採用されている。さらに、HANと呼ばれる"HEMSコントローラと各家電間の区間"についてのWi-SUNプロファイルも1月29日に策定された。

今回開発された無線機は、HAN用のWi-SUNプロファイルを実装している。HEMSコントローラとスマートメータの1対1通信を想定するBルートに対し、HANでは、単一のHEMSコントローラに対して2台以上の家電が接続する1対多通信となる。さらに、距離などによりHEMSコントローラと家電間の通信状況が劣悪な場合には、無線の中継が利用できるのが特徴となっている。また、今回の実装では、Wi-SUNプロファイルの規定に準じ、複数の家電に対しての認証をそれぞれ適切に行うと同時に、適切な経路を設定した上で、MAC層における制御情報の交換を利用して中継通信を実現している。

今回の成果に関して想定するHEMSの概要。家庭内の各家電とスマートメータは、HEMSコントローラによって無線通信を介して集中的に制御される。今回実装に成功したWi-SUNプロファイルは、HANに関するもので、HEMSコントローラに対する複数家電の接続や、中継器を介在させた無線の中継による接続形態も想定している